流行りのテレビ番組ではないが「へぇ〜」と何度も感心してしまうこと請け合いの本書。生物学者であり、俗説に流されがちな科学理論に対して厳しく異論を述べ続けている池田清彦氏のエッセイ集だ。
「クローン人間作って、何が悪い」「地球温暖化論のいかがわしさ」「外来種撲滅キャンペーンに異議あり」といったタイトルが目次に並ぶことからも分かるように、内容はかなり刺激的。現代社会の常識に挑むかのように、時に毒舌を撒き散らしながら持論を展開していく。
なかでも唸ってしまったのが、地球温暖化論についての章。地球温暖化は人類全体の脅威であり、その元凶は二酸化炭素の人為的増大というのが現時点での世間一般の共通認識だと思うが、著者は地球上の気温は周期的に寒冷化と温暖化を繰り返すものであって、今は温暖化の時期にあるだけではないのかと切り捨てる。もし地球温暖化論が仕組まれたものであるとしたら、地球的規模でマインドコントロールが行われる理由とは一体何なのだろうか?
詳しくは本書を見ていただきたいのだが、これまで漠然と信じ込んでいたこの事象について、ちょっと調べてみるかという気持ちになる人は少なくないだろう。
他にも、クローン人間を禁止する理由は何一つない、ブラックバスなどの外来種から日本古来の固有生物相を守ろうとする思想は理論的に底抜けである、定期健診は健康な人を病気にしてお金を巻き上げるための装置だ…と、著者ならではのストレートで遠慮のない物言いは続く。そうした考えすべてに同意するかどうかは別にしても、結論に至るまでの理論はきちんと展開されているので、少なくとも「そういった考え方をする人もいるんだなぁ」とは思える。
科学的な言葉に弱い私達は、それらしい説明についコロリとだまされてしまう。本質を見極めるためには、著者のような(?)少々ひねくれた観点から物事を見てみることも大切なようだ。そうした“やぶにらみ”精神を持っていた方が、何でもかんでも鵜呑みにするよりはいいかも……。こう感じるのは、やはり本書の影響?
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『やぶにらみ科学論』
池田清彦 著
筑摩書房/700円(税別)
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