進化の謎を絡めて科学の進歩に警鐘を鳴らした名作といえば、衝撃的なラストシーンで有名な『猿の惑星』。地球を出発してから1年6カ月後(宇宙時間で2000年後)にオリオン座のある惑星に不時着した主人公が、人間と猿の立場が逆転した世界を目にする、という物語の導入部分は、さして映画に興味がない人でも知っているのではないだろうか。この星では、猿が言葉を話し、宗教をあがめ、オランウータンが権力者として君臨する階級社会を作り上げている一方、人間は言葉も話せず、ただ作物を食い荒らす害獣として狩られるだけの存在。地球上で進化の頂点に立つ人類とは全く違う、何万年分も退化してしまったかのような人間の姿だった。
“人は猿(類人猿)から進化したもの”という進化論が当たり前の主人公には、この星の進化経過が納得できず、「なぜ、猿が人間より進化したのか?」という謎の答えを追い求め、とうとう最後に“進化の秘密”を知ることになる。劇中、猿の社会として描かれているのは中世ぐらいに当たるのか、街の機能も交通手段も発展しておらず、また科学に対する考え方も頑ななまでに封建的で、つい「しょせん猿の世界は…」などと思ってしまうのだが、最後には人間の方がはるかに愚かな動物だということを思い知らされてしまうのだ。
一方、人気アメリカン・コミックを映画化した『X-MEN』には人類の進化形が登場する。それが、DNAの突然変異により、生まれながらに超人的なパワーを持った“ミュータント”。彼らは、何にでも変幻自在、天候を思いのまま操れる、どんな傷でもすぐに治癒、テレポーテーションが可能、テレキネシス(念動力)を持つ……とそれぞれに特殊能力があるのだが、そうした力を持つがゆえに、家族から疎まれ、社会からも迫害されて、孤独や苦悩を抱えながら生きていくことを強いられる。
人が自分達より力の優れた少数派を疎んじるという差別の構図は今に始まったことではなく、もし実際にミュータントなるものが誕生したら、そうした新しい差別が生まれる可能性が高いことは誰も否定できないだろう。私達は差別や偏見は悪だと理性で分かっている半面、それをなくすことの難しさも知っている。だからこそ、人間との融合を目指して悪と戦うミュータント戦士「X-MEN」だけでなく、人間を憎みX-MENと敵対するもう一つのミュータント集団「ブラザーフッド」の気持ちにも共感できるし、それが本作品の面白さにもなっているのだが……。やはり、ここでも人間の愚かさは変わらないということか。
さて、アメリカン・ヒーローに対抗するわけではないが、日本のヒーローものにも人類の進化形が登場する。それが『仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』の中の“オルフェノク”。昔の仮面ライダーでいうショッカーで、普段は人間の姿をしているが、時に全身を鎧で覆った半人半獣の姿に変化して怪物パワーを発揮し人間を襲うのだ。本作品の舞台は人間はあと2344人しか残っていない、全人類オルフェノク化が目前に迫った近未来。人類のほとんどがショッカーとはまさに世も末だが、このオルフェノクの中にはごく少数ながら、人間との共存を目指し、人間が襲われるのを阻止しようとする者も存在する。ここで少数派の扱いを受けるのは人間ではなく、人間との共存を望むオルフェノク。人間とオルフェノクのどちらからも理解してもらえず苦悩する姿は、X-MEN同様、この仮面ライダー555(ファイズ)シリーズでも重要なポイントになっている。
ちなみに、仮面ライダー555の変身スタイルは、「ファイズフォン」という携帯電話に変身コード「555」を入力しENTERボタンを押した後、これをベルトに挿して「変身!」と掛け声をかけるもの。携帯電話を使うところが子供に受けているのだが、オルフェノクが絡むこともあってストーリーは少々複雑。やや大人向けの内容になっているので興味のある方はぜひ!
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