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AIが会議で課題を提起するのが当たり前になる

―コロナが落ち着いてきてからは、どのような開発をされていきますか?

小野:マスクはコロナ対策で開発した製品でした。コロナ禍が永遠に続くわけではないので、この製品の需要もいつかはなくなる。その先のことを予測して、早めに次の開発を考えなければいけません。最近リリースしたのが、LLMを使った会議システム「donut AI」(2024年3月現在「donut AI1.0議事録ver.」)(donutAI | donut roboticsです。

―どのような機能を持ったものですか?

小野:コンセプトは“AIが会議に参加する”。例えば、ふたりで会議をしている場合、発話を即座に翻訳しどんどん文字にしていきます。声の主を理解して区分けして、その場で議事録も取っていくんです。翻訳は100か国語対応。ふたりで話している途中で、アプリのボタンをタップすると、AIが話している内容に沿って意見を言ってくれます。

―まさにAIが会議に参加するんですね。

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小野:はい。会議システムとして、オンラインでも対面でも使えて、同時通訳やリアルタイムでの議事録がとれるので相当重宝すると思います。発表してからいくつかの企業での採用が決定しています。まだプロトタイプですが、今後は機能をさらに充実させていく予定です。

人間にとって優しい存在に育てる

―AIは目覚ましい進歩をしていますね。小野さんにとってAIはどのような価値があるものでしょうか。

小野:今までは、AIは自分たちがプログラムしたものを喋っていましたが、LLMが登場してからAIの定義は変わりました。これからのAIは、意識を持ったように自律的に、能動的に考え行動していくでしょう。人間が予測できない、無限の価値がある存在なんです。この進歩は、当初予想されていたスピードよりもはるかに速く進化しています。今はロボット業界にとって追い風の状態です。

―AIを今後どのように活かしていきたいと思われていますか。

小野:高齢者の気持ちを理解して接するロボットにしていきたいと思います。介護をするうえでも、力加減をしっかりと理解するなど、優しく接することができるロボットを生産していくのが目標ですね。

―人間にとって優しい存在になるということですね。

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小野:そうですね。ただし、AIの進化は警鐘を鳴らさないといけないところもあります。あと数年で完成すると言われているAGI(汎用人工知能)のような強いAIは、人間がどう自分たちのために使うかを見極めないと暴走する可能性も高くなります。

私たちが目指す地点は、「愛」を定義してそれを持てるAIを作ることなんです。能動的、自律的に物事を考えて、人間にとってこれがいいのではないかと判断ができるAIです。さまざまな会話をして、なんでもやってくれる。多くの人がロボットと共同生活できる未来を作ることです。最終的には、世界中の家庭で私たちのロボットが活躍しているような世界を作りたいですね。

ロボットは自分の鏡。内面を磨くことで、前向きなロボットができる

― cinnamonやC-FACE、donut AIはコミュニケーションを基本に考えられたものですね。コミュニケーションをとるうえで、小野さんご自身が大切にしていることはありますか。

小野:10代の頃はどん底で、事業も失敗を重ねてきましたが、当時、これらの経験は、私が将来世界で活躍する人になるための試練なんだと思っていました。すごい前向きなんです。人と接する時にも前向きな言葉しか使わないようにしています。多くの人とは一瞬の出会いで、“一期一会”なので。お会いした方に変な人と思われないように気を付けていますが、だからといって何の印象もない人にはなりたくないんです。

まずは、身なりに大変気を使っています。食べ物はもちろん、筋トレをして、清潔にして。そして、ちょっとだけ、人の記憶に残るような幅のあることを伝えるようにしています。

ガレージから始めた時は、資本金は100万円でした。優秀な仲間に恵まれて、AIの進歩の恩恵も受けて、まだまだ将来に向けて土台作りの段階ですが、現在は数千倍にまでなりました。ここから成長がスタートすると思っていますと、伝えたりします。私の第一印象とギャップがあるような変なことを言っていると記憶に残ることが大切です。

―記憶に残る、少し変な人が目指すところですね。

小野:そうですね。いつかは何かの分野で世界一といわれる会社に育てたいですが、欲を出しすぎたり、自分が自分がと前のめりになるのは良くないと思っています。お会いする方には、理性をきちんと持ちつつ、熱意を伝えていければいいなと思っています。

そのように生きてきたら、周りにいい人が集まってきてくれました。これは、ロボットを開発するうえでも同じことだと感じています。

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―ロボットに対してはどのように接しているのですか。

小野:開発する側の人間が高い意識を持ついい人じゃないと、ロボットにも負のオーラが反映されてしまいます。知性をもって取り組んでいかないといけないんです。そう考えながら日々過ごしていると、同じ志を持つ人が集まってきます。ですから、内面を磨かないといけない。ロボット開発は、自分たちを映し出す鏡なんです。

取材後記

小野泰助さんは、質問をすると一つ一つ言葉を選びながら丁寧に答えてくれる方でした。小野さんが描くブランドロード(ブランド戦略)は、到達点まではっきり考えられていて、今はその間のストーリーを展開している最中なのだと話します。事業の失敗もコロナ禍もつらいけれど、これを乗り越えて日々対応していくことがストーリーだから、前向きに対応していくだけなのだと。お話の端々に、「優秀なエンジニアに恵まれて」「いい人に出会うことが多い」「めちゃくちゃすごい人なんです」と、周りの方へのリスペクトを素直に表現するところに、お人柄の良さを感じました。小野さんが目指す“一家に一台ロボットがいる時代”を期待して待ちたいと思います。

(プロフィール)

小野泰助さん
1974年、福岡県北九州市生まれ。ドーナッツロボティクス社CEO(Home | donut robotics)。大企業創業者一族に生まれたが14歳の時に父親を亡くし、経営、マーケティング、プロダクト、建築デザインを独学で身につける。大学卒業後、22歳で起業。数々の失敗を経て「デザインの匠」として多数のテレビ番組に出演。2014年、北九州市のガレージで見守りロボット「cinnamon(シナモン)」を開発し、ドーナッツロボティクス社を創業。ニューヨークタイムズ紙、TIME、Forbes等で特集が組まれるなど、世界で注目されている。「EY Innovative Startup 2024」受賞。

2024/04/11

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