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同窓会ウエブ「ゆびとま」の登録会員は270万人:小久保徳子さん
コム人対談
小久保徳子さん

Part1 「ゆびとま」の誕生

 コンピュータで何をやりたいのか!?
 ボランティアに後押しされて株式化を断行

Part2 自浄作用の働く空間

 ゆびとまは「セントラルパーク」

Part3 サイバーとリアルの融合

 良質の出会いを演出する”正しい”出会い系



Part3 サイバーとリアルの融合

矢野

先日、大学時代の寮の同窓会があって、三十数年ぶりに参加しましたが、同窓会にも波がありますね。60歳を超えると、みな暇になるから、古いつてを頼って集まり同窓会を開く(笑)。ゆびとまのシステムはこの古いつてを頼らずとも、学校全体をカバーできる。稲門コミュニティは、いわばゆびとまの早大版ですが、こうしたシステムが増えていくと、ゆびとまのサイトはなくてもいいということにはなりませんか。

小久保

同窓会はいくつあってもいいと思っています。たとえば同じ学校でも、Aさん主催の同窓会や、Bさん主催の同窓会がある。それぞれやりたい人が手を挙げて、幹事の好きなやり方でコミュニティをつくればいいのではないでしょうか。

矢野

ゆびとまを面白いと思うのは、一種の「出会い系」サイトだからです。出会い系サイトには、現実のコミュニティと無関係のケースと、既存コミュニティをベースにしたのと、大きく分けると、二種類ありますね。いわゆるケータイなどの出会い系サイトはネットだけの世界で、既存コミュニティとのしがらみがない一方、犯罪を誘発する危険もあります。
 ゆびとまは後者で、同窓会あるいは同窓生という実在するコミュニティを基礎にしていることが自ずから秩序をもたらしている。つまり、昔のつき合いがあるから、行動にも一定の抑制が働くわけですね。これはまさにセントラルパークかもしれません。
 サイバーリテラシーはリアルワールドとサイバースペースの相互交流をテーマとしていますが、サイバースペースの実体を理解する力を身につけて、サイバー・プラス・リアルな時代を生きていくことが大切だと訴えているんです。
 サイバースペースの力を借りてリアルのコミュニティを拡大する、あるいはサイバースペースでの出会いをリアルな場で強化することは、世界的な流れでもあります。これを"正しい"出会い系サイトと呼ぶなら、ゆびとまはまさにその嚆矢といえますね(笑)。
 アメリカで「Friendster」という出会い系サイトが急成長していますが、ここにメンバー登録するには既存のメンバーのメールアドレスも登録しなければなりません。つまり既存会員である友人・知人の紹介が必要ということですね。リアルワールドでちゃんとした友だちつき合いのできる人でないとFriendsterには入れない。友達の輪のなかで個人を保証するというわけです。

小久保

日本では、Friendsterと似たようなシステムで2年ほど前にオンライン名刺が流行ったことがありますが、すぐにすたれてしまいました。オンライン名刺はすでに誰かと交換した名刺をネット上で共有し、職場や電話などの情報が変わると、一つ修正するだけで相手に渡した名刺の情報も変わるという便利なものでしたが、あまり普及しませんでした。だから、Friendsterの仕組みが日本でそこまで広がるかはちょっと疑問です。

良質の出会いを演出する"正しい"出会い系

矢野

リアルとサイバーを融合して、アメリカで成功しているもう一つのサイトが「meetup.com」です。2002年に開設され、すでに全世界45ヶ国604都市に80万人も登録者がいます。このサイトは現実のコミュニティで会うこと、すなわち対面的でローカルな交際を広げることを目的としています。同じ趣味や関心をもった近所の人びとがコミュニティを作るための情報交換や会場づくりなどを支援しています。だからオフラインの方がメインです。
 収入源は集会施設のあっせんや幹事役の代行など、会員同士が会うための周辺サービス全般の手数料です。集会での議事録作成や写真撮影サービスまで提供する。米大統領選のディーン民主党候補も、このmeetup.comを選挙運動に使ってかなりの成果を上げているようです。
 ゆびとまもmeetup.comのようなサービス提供が可能ではありませんか。

小久保

その通りです。じつは8年前からそのことを言ってきました。会うことを簡単にするためにインターネット同窓会をつくったが、まだその目的を達成できていないのではないかというのが私たちの反省です。
meetup.comに感心したのは、リアルな労働集約的サービスをあえて最初から提供したことです。私たちはアイデアがあっても、まだ体力がないからやれないと思っていた。うまくネットを使いながら、meetup.comがそれを実現してしまったのはすごいことです。

矢野

ゆびとまが契約した施設で安く同窓会を開くとか、幹事のアシスタントをするなど、すぐにも実現できると思いますが……。

小久保

今後はぜひ同窓会を開く支援をしていきたいですね。すでに、各地域でそうした支援をおこなっている小さなグループがあります。ゆびとまとして、彼らと連携していきたいですね。

矢野

ゆびとまは大規模コミュニティではありますが、会員のニーズによってセグメントされているわけではないですね。あくまでも学校単位のセグメントでしかない。ようやく土台ができたいま、その上でいろいろな展開ができそうですね。

小久保

270万といっても、すべての人が活性化しているわけではないのが弱みです。活性化していない人から収益を上げられないが、サーバー投資や事務局の負担は人数分のしかかってくる。一方で、ゆびとまには「たくさん」をカバーする魅力がある。つまり、網羅する力ということですね。この「たくさん」力も生かしていきたいです。

矢野

ゆびとまというネーミングはいいですね。ネットで組織化を進める入り口として、ゆびとまは大きな可能性をもっています。サイバースペースに対するリアルワールドの復権が世界の潮流とも言えるなかで、インターネットも新しいステップに入りました。ゆびとまもいよいよこれから正念場ですね。

小久保

私が仮に白旗を上げても、またきっと誰かがやるでしょう。同窓会サイトにそれだけのニーズはあると思います。ただ、プログラムやツールはいくらでもつくれますが、運営には大変な手間暇とノウハウが必要です。私たちにはそれを培ってきた自負があります。良質なリアルの出会いを提供するには「正しい仮想空間」がいる。ゆびとまの登録者なら安心できるという品質とブランドを確立できれば、もっと発展できると思います。

矢野

2004年はぜひ「ゆびとまの年」にしてください(笑)。今日は、楽しいお話をありがとうございました。

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撮影/岡田明彦 Top of the page

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