ナビゲーションを読み飛ばすにはここでエンターキーを押してください。
COMZINE BACK NUMBER

日本デザイン探訪〜「今」に活きる日本の手技 益田文和

日本は国土の7割を森林が覆う世界でも有数の森林国であるにもかかわらず、木材資源を価格の安い輸入材に頼ってきたため、コストのかかる国産材は経済価値を失い、その結果、森の手入れが行き届かないので良い木材を供給できないという悪循環に陥っている。そうした森林の再生を目指すmore treesの活動に協賛しているアットアロマが売り出したのが、国産ヒノキのアロマディフューザー、hinocoである。
デザインは酒井俊彦氏、木工挽物は渡辺雅博氏、使っている木は酒井氏の故郷である高知産ヒノキの間伐材だという。ちなみにmore treesは高知で二つの森林再生プロジェクトを進めている。エッセンシャルオイルは深津恵氏による森をイメージしたオリジナルアロマで、太陽の恵みを受けた果実の馥郁たる香りを思わせる「サンシャイン」、森の風が運んでくる水の香のような「ウォーター」、豊かな土壌に眠る木の根のような「アース」の三種類から選べる。それを3滴ほど、てっぺんの皿状の部分に垂らすと、ヒノキ自身の香りと混じり合いながらゆっくりと広がる香気を楽しめる。エッセンシャルオイルのボトルは、少しふっくらした胴体部分に収納することができる。
素材のままの白木のためか、御神酒の徳利を思わせるような形だが、アロマディフューザーと聞いて違和感なく受け入れられるのは、どこかしら、ローマ時代の古代ガラスに見られる香油壺を思い出させるからかもしれない。高知の森、四万十ヒノキ、白木の神具、香油壺の連想は悪くない。それにしても、小径の間伐材の柾目を出す方向でこれだけ滑らかに削り出すのは、並大抵のことではないだろう。
日本の自然と文化に根差した商品開発は、この国のものづくりがこれから進むべき一つの方向であることは間違いない。

ウッドディフューザー(ヒノコ) http://www.at-aroma.com/product/at-aroma/diffuser/hinoco.html

Vol.11 国産ヒノキのアロマディフューザー more trees×オリジナルアロマ

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年
東京生まれ。
1973年
東京造形大学デザイン学科卒業
1991年
株式会社オープンハウスを設立(代表取締役)
1995年
Tennen Design '95 Kyoto 実行委員長
2000年
東京造形大学教授に就任
2006年〜2009年
サステナブルデザイン国際会議実行委員長
1988年〜2009年
グッドデザイン審査委員
現在
近年は特にサステナブルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。
Top of the page

月刊誌スタイルで楽しめる『COMZINE』は、暮らしを支える身近なITや、人生を豊かにするヒントが詰まっています。

Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2003-2015

[サイトご利用条件]  [NTTコムウェアのサイトへ]