満開の桜とランドセル。何十年と繰り返されてきた日本の春の光景だが、あのランドセルのような鞄にカメラを入れて歩きたいといつも思っていた。カメラバッグというと、いかにもそれっぽいごつくて泥臭いものばかりで、本職が仕事で使うなら仕方ないとしても、普段持ち歩く気にはならない。だからと言って、そうと悟られないように作り込んだカメラバッグは、更に野暮ったくてぐったりする。なぜ、ランドセルのような上質で機能的ですっきりとした真っ正直な革鞄がないのだろうと考えていたのだが、やっと見つけた。
JR山手線日暮里駅から舎人ライナーに乗り換える。舎人を「とねり」と読むのは難しいが、千五百年以上も昔から天皇に使えたエリート公務員のことらしい。東京都の北端、足立区の埼玉県境にその舎人の地名が残っている。3年前に開通した高架式自動運転のニュートラム、舎人ライナーがゆっくりと北上し隅田川に次いで荒川を渡る辺りは、東方はるかに視界が開ける。西新井大師西駅で降りると駅前の小公園に隣接して土屋鞄製造所の本店兼工房がある。
創業以来40年以上、良質な革製のランドセルを作り続けている老舗である。その実直な仕事と端正なデザインは、大人の鞄作りにも活かされていて、工房の作業も眺めることができる本店のショールームは、ちょっとした鞄ミュージアムのような雰囲気である。ここで見つけたのがランドセルのようなカメラバッグ。まず大きさが良い。パッドも付いていて一眼レフと交換レンズがすっぽり入るが、コンパクトカメラなら身の回りの小物もいろいろ入れられる。そして何よりもランドセルを彷彿させる、たっぷりとしたヌメ革のフラップが最高である。
カメラ散歩バッグ(ベージュ)
http://www.tsuchiya-kaban.jp/
- 1949年
- 東京生まれ。
- 1973年
- 東京造形大学デザイン学科卒業
- 1982年〜88年
- INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任
- 1989年
- 世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員
- 1991年
- (株)オープンハウスを設立
- 1994年
- 国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー
- 1995年
- Tennen Design '95 Kyotoを主催
- 現在
- (株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。