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日本デザイン探訪〜「今」に活きる日本の手技 益田文和

Vol.15 房州うちわは江戸の風流 江戸の匠×安房の竹

福島第一原発の事故をきっかけにエネルギー政策を根本から見直すため、日本の原発は次々とその電力供給シェアを低下させている。そのため関東を始めとして全国的に節電を余儀なくされるなか、今年の夏も猛暑が予想される。電力に頼らずとも涼しく過ごすために、是非とも良いうちわが欲しいと思う。プラスチック成型品にアート紙を張った代物ではなく、本物のうちわを求めて千葉県の南房総へ。
房州、つまり安房国は千葉県房総半島の南端、南総里見八犬伝の舞台である。東京からは「アクアライン」の海底トンネル経由で木更津に上陸し、東京湾を右手に見ながら館山自動車道を南下する。温暖な南房総の気候に加えて、太平洋側の外房とは一味違う内房の穏やかな風土の中を進むうち、自然に心が和んでくる。館山市に入る直前、南房総市富浦町に房州うちわの老舗太田屋さんを訪ねた。
房州うちわは、四国香川の丸亀うちわ、京うちわと並んで日本三大うちわの一つに数えられている。江戸時代から、役者絵などを刷り込んだ絵うちわとして大いに流行った「江戸うちわ」の材料として、この地方の良質な女竹を供給していた。大正12年の関東大震災で焼け出された東京のうちわ職人たちが、素材と加工技術を頼って館山市周辺に移り住んだことから、房州うちわの本格生産が始まったという歴史がある。
房州うちわは、丸い竹をそのまま柄にしてその根に近い方をササラ状に割いてうちわ骨にするシンプルで高度な技術と、その構造が生み出す美しい半円形の「窓」に特徴がある。扇面には紙の他に、手ぬぐいや浴衣地、ちりめんなども使われる。この辺りがいかにも江戸の粋である。浴衣地の染付に使った型紙をそのまま張ったこれなどは、風流の極め付きである。

http://ota-ya.net/index.html

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年
東京生まれ。
1973年
東京造形大学デザイン学科卒業
1982年〜88年
INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任
1989年
世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員
1991年
(株)オープンハウスを設立
1994年
国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー
1995年
Tennen Design '95 Kyotoを主催
現在
(株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。
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