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日本デザイン探訪〜「今」に活きる日本の手技 益田文和

Vol.16 琥珀は恐竜の涙の化石 白亜紀の樹脂×8,500万年の時の重み

琥珀は、数千万年から数億年前、まだ恐竜が歩き回っていた頃の植物の樹脂が土中で固まった化石だという。現在世界で発掘されている琥珀の中でも、岩手県久慈市産のものは最も古い8,500万年前の地層から掘り出されると聞いて、機会があれば行ってみたいと思っていた。東北へ出かけた帰りに盛岡で余震に遭い、列車が止まってしまったので、思わず久慈行きのバスに乗ってしまった。三陸鉄道が動いていればリアス式海岸沿いに北上したいところだが、津波以来、宮古・久慈間がつながっていないので仕方ない。
バスが濃い緑の中を縫うようにしてひたすら東北へ走って太平洋まで出たところが久慈市である。3月の震災で八戸線が津波で流されて止まったまま、忘れられてしまったように静かな久慈駅前からタクシーに乗って、琥珀博物館へ行きたいと告げると「珍しいねぇ」と言われる。最近は来る人もあまりないらしい。
琥珀博物館といってもアミューズメント型の観光施設であるが、世界各地の琥珀が見られるのが面白い。シャンパンのような明るい色のものから、時代物のシェリーのような深い色のものまでさまざまである。本などの写真で見たことのある、虫や植物が封じ込められたものも久慈では珍しくないらしい。
しかし、久慈らしい琥珀といえば、色はやや暗い赤みの強いもので、どちらかというとamber (黄みがかったいわゆる琥珀色)というよりはumber(赤褐色)に近いものが多く、美しい渦状の縞模様が特徴である。地震や津波どころか、恐竜を滅ぼしてしまった巨大隕石の衝突をも経験してきた琥珀である。光にかざしてみると、恐竜の涙のような化石を通して1億年前の地球の様子が見えてくるようで、何とも言えず大きな気持ちになる。

久慈琥珀博物館
http://www.kuji.co.jp/museum/

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年
東京生まれ。
1973年
東京造形大学デザイン学科卒業
1982年〜88年
INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任
1989年
世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員
1991年
(株)オープンハウスを設立
1994年
国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー
1995年
Tennen Design '95 Kyotoを主催
現在
(株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。
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