東海道新幹線の米原駅で北陸本線に乗り換える。琵琶湖の東側をたどるように本州のくびれた腰のような部分を北上し、敦賀で日本海側に出ると、もう北陸である。福井県、鯖江市は日本一の生産量を誇るめがね、繊維そして漆器の産地。隣接する越前市に残る和紙や打ち刃物などとともに、伝統工芸が現代に息づく地域なのである。住宅街のような一角に、明るいカフェ風なHacoaの工房を訪ねる。
千五百年の歴史を誇る越前漆器も、多くの漆器産地がそうであるように、伝統の技を現代に引き継ぐ一方で、プラスチック成型品を化学塗料で仕上げた「うるし風」が主流を占めるようになってしまった。その市場環境の変化に対応するのは塗師にとっても大変だが、本当に大変なのは木地師であろう。手彫りの木地で、プラスチック成型品と数量や価格で張り合うのは馬鹿げている。
越前塗の木地師が作るUSBメモリー、Hacoaフラッシュメモリ"Tablet"は、小さくてかわいらしいが本物である。4GB のメモリチップを実装するケースは、本物の木を、本物の木彫技術で彫った逸品である。USBコネクタキャップを着脱してみれば、その加工精度の高さが分かる。ザラッとした肌理(きめ)が面白いチーク、ずっしりと重厚なローズウッド、鮮やかな紫色のパープルハート、輝くような白木のメープル。どれも手放せなくなる。
Hacoa USBメモリ"Tablet"
http://www.hacoa.com
- 1949年
- 東京生まれ。
- 1973年
- 東京造形大学デザイン学科卒業
- 1982年〜88年
- INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任
- 1989年
- 世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員
- 1991年
- (株)オープンハウスを設立
- 1994年
- 国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー
- 1995年
- Tennen Design '95 Kyotoを主催
- 現在
- (株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。