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日本デザイン探訪〜「今」に活きる日本の手技 益田文和

画像 ブリキの茶筒 取込盆用Vol.24 明治生まれのブリキの茶筒 一番茶×丸罐

4月の声を聞くと新茶が楽しみである。立春から数えて八十八夜、5月頭に摘み取る一番茶は、香りが良く甘みがあって最もおいしいと言われる。その新茶を何とか手に入れたいと思いつつ、その前に良い茶筒が欲しくなる。
関西に行くついでに、以前から気になっていた開化堂のブリキの茶筒を求めに京都駅で途中下車。河原町通を東本願寺別邸渉成園の塀に沿って上がる。この辺りはかつて東に眺望が開けていて、渉成園の庭園も東山の借景で知られていたと言うが、今はマンションが立ち並んでしまって見る影もない。それでも市比賣(いちひめ)神社の角を東に入った途端、さすがに京都の風情である。と、すぐそこに開化堂の看板が見つかる。
明治8年創業というから140年以上続く老舗である。当時英国から輸入したブリキを丸めて作った丸缶の、その作り方は今も変わらない。その後、銅や真鍮、銀を巻いたものも扱うようになってきたが、どれも中筒はブリキである。ブリキは鋼板に錫をメッキしたもので丈夫で錆びにくい。加工精度が高く、密閉できるので中身の茶葉がしけらず香も逃げない。
ストンとした無地のデザインが基本だが、四つ葉のクローバーや松竹梅、青海波のプレス模様が入ったものもある。求めたのはクローバー模様のブリキ製で、100グラムの茶葉が余裕をもって入れられる120グラム入りの取込盆用。茶びつに入れるために背が低く、少しずんぐりしている。蓋と胴の部分の模様を合わせるようにすると、スーッと蓋が滑って閉じる、その精度感がたまらない。
さてこの茶筒、使うたびに手のひらでなでていると独特の色が付いてくるという。ブリキの場合は錫メッキのかかり方によって、新しいときには見えない縞模様が現れるという。ああ、ますます新茶が待ち遠しい。

 
開化堂 http://www.kaikado.jp/japanese/

画像 四つ葉のクローバーのプレス模様画像 開化堂のロゴマーク画像 茶葉を入れた状態

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年
東京生まれ。
1973年
東京造形大学デザイン学科卒業
1982年〜88年
INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任
1989年
世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員
1991年
(株)オープンハウスを設立
1994年
国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー
1995年
Tennen Design '95 Kyotoを主催
現在
(株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。
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