
氷を入れた飲み物が恋しい季節である。グラスに氷を落とす時のキラン、カランという透明な音は華やかだが、焼き物の器の中でカラコロと鳴る氷には控えめな涼やかさがある。
長崎県の波佐見焼は、すぐ隣の佐賀県有田の伊万里焼に比べるといくらか地味だが、江戸時代から質の良い日用の磁器製品を供給してきた大産地である。戦後の陶磁器デザインの近代化を牽引(けんいん)してきた森正洋氏の手になる、数々の名作を生んだ白山陶器も波佐見に本拠地を置く。
その直営店が大阪にできたと聞いてのぞいてみた。地下鉄御堂筋線の淀屋橋駅に直結したビルの2階にある明るいショールーム兼ショップでは、懐かしい名品から最新モデルまでゆっくりと眺めて選ぶことができた。
そこで目に留まったのがレリーフホタルというロックカップ。ホタルとは、素地に透かし彫りを施した上に釉薬(ゆうやく)を掛けて穴をふさぎ焼き上げる、伝統的な磁器の手法「蛍手」のことで、釉薬を透過する光がほんのりと彫り模様を浮かび上がらせる。表面の浮き彫りが作る陰影と相まって、光の方向や強さ、色などによる微妙な表情の変化が楽しめる。
夏の夜の一人酒にはもってこいのカップである。その純白のストンとしたうつろを満たす液体は何でもありだが、私の場合はじっくり寝かせたバーボンがいい。
白山陶器ショールーム
http://www.hakusan-shop.com/
- 1949年
- 東京生まれ。
- 1973年
- 東京造形大学デザイン学科卒業
- 1982年〜88年
- INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任
- 1989年
- 世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員
- 1991年
- (株)オープンハウスを設立
- 1994年
- 国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー
- 1995年
- Tennen Design '95 Kyotoを主催
- 現在
- (株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。