ナビゲーションを読み飛ばすにはここでエンターキーを押してください。
COMZINE BACK NUMBER

日本デザイン探訪〜「今」に活きる日本の手技 益田文和

画像 銅製おろし金Vol.29 おいしい音の銅製おろし金 燕(つばめ)の目立て×おろし薬味

秋の気配とともに回復する食欲が真っ先に反応するのが、「新そば」という言葉であろう。しかし、正直に言って秋口に登場するいわゆる新そば自体は、それほど旨いと思ったことはない。夏場に衰えた食欲が回復し始めたばかりのころには、わさびの利いたつゆにちょっとつけて、さっといただくもりそばが合うのであって、新そばが旨いというよりは時候との取り合わせが上手いのである。
わさびに限らず、大根おろしにもみじおろし、おろし生姜やおろしニンニクなど、日本の料理におろし薬味はなくてはならない脇役である。であれば、最近スーパーで売っているプラスチックのおろし器ではなく、本物のおろし金を手に入れようと新潟県燕市まで出かけた。
上越新幹線の燕三条は燕市と三条市の市境にある駅名である。駅の北側の燕市は、ステンレスを始めチタンやマグネシウムなどの金属加工で知られている。江戸時代から和釘(わくぎ)や鎚起銅器(ついきどうき)などの産地であったこの地に、明治40年ヤスリ専業メーカーとして創業したツボエ。その目立ての技術を活かして造るおろし金は、現在業界一のアイテム数を誇っている。中でも本職の料理人に愛されている銅製のスーパーハイカットシリーズは、分厚い銅板にすずメッキを施して一目ずつ刃を掘り起こしたもので、不均等に並んだ刃が素材の繊維をきめ細かく切りおろす。
銅の材質感とおろし刃の美しさは、まさに工芸品である。小柄なものなど、海外への手土産にしても喜ばれそうだ。英語ではおろし金のことを「不愉快な音をたてるもの」という意味のgraterと呼ぶ。それでは、シャゴシャゴとおいしそうな音を立てるこのおろし金は何と呼んだらよいのだろうか。


ツボエ
http://www.tsuboe.co.jp/

画像 おろし刃画像 銅の材質感画像 わさびをおろしている様子

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年
東京生まれ。
1973年
東京造形大学デザイン学科卒業
1982年〜88年
INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任
1989年
世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員
1991年
(株)オープンハウスを設立
1994年
国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー
1995年
Tennen Design '95 Kyotoを主催
現在
(株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。
Top of the page

月刊誌スタイルで楽しめる『COMZINE』は、暮らしを支える身近なITや、人生を豊かにするヒントが詰まっています。

Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2003-2015

[サイトご利用条件]  [NTTコムウェアのサイトへ]