秋が深まると夜空を見上げることが多くなる。思いがけなくさえざえとした月に出会うのもうれしいが、なんといっても星の数は澄んだ空気のバロメーターだ。たまには夜空を撮りに出かけてみようかと考え、三脚を持ち出して気がついた。雲台が違うのだ。
雲台というのは、撮影用の三脚の上に取り付けてそこにカメラを据え付けるための台である。一般的な雲台は、三軸の回転機構を2本の棒状のハンドルで操作する。一方、自由雲台というのはカメラを一つの球体で支えているような構造なので、ストッパーのねじを緩めてやるだけで自由自在にレンズの向きを変えられる。広い夜空を観察するには、ぐるりとカメラを回せるこの自由雲台が好都合なのである。
自由雲台は多くのメーカーから発売されているが、なかでもUMEMOTOは自由雲台の専門メーカーとして、マニアの間で高い評価を得ている。東京都江東区にある梅本製作所の通販以外でこの雲台を扱っている店は少ないが、中野駅前のフジヤカメラ店でSL-40ZSCを見つけた。金属を削りだして一台一台作られるそれは、やや無骨なデザインながら精巧で、あたかも工芸品のようなディテールを持っている。蜂蜜をかきまわすような滑らかさでスルスルと動き、ピタッと止まる操作感はまさに一級品である。
この11月は、おうし座流星群、しし座流星群が極大となり、下旬にはアイソン彗星(すいせい)がやってくる。自由という名の雲台を担いで、星空探しに出かけるか。
梅本製作所 http://umemoto.ecnet.jp/
- 1949年
- 東京生まれ。
- 1973年
- 東京造形大学デザイン学科卒業
- 1982年~88年
- INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任
- 1989年
- 世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員
- 1991年
- (株)オープンハウスを設立
- 1994年
- 国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー
- 1995年
- Tennen Design '95 Kyotoを主催
- 現在
- (株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。