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生活に順応できる車椅子こそが、障がいの概念を変える社会を創造する

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 シンプルな構造を持つCOGYだが、ICT技術の活用も始めている。スマホアプリ『COGY+』は、センサー内蔵のインソールと連動して、COGYをこぐ時の足圧とバランスが計測できる。リハビリで歩けるようになるには、かかとからつま先に足圧が抜けていく歩き方を身に着けるのが理想だ。アプリにデータが記録されるため、力の偏りを確認できるうえに修正しやすい、医師もデータを見て効率的なリハビリ計画を立てられる。かかと、つま先、どちらかに力が偏っていると「ワンワン」「ニャンニャン」と、動物の鳴き声で知らせてくれるので、楽しみながらリハビリができる。
 更に、データが蓄積されれば、症例別に傾向を分析して「症例別トレーニングプログラム」の開発にもつながるだろう。「現時点でわかっているのは、パーキンソン病の患者さんはつま先でこぎ、認知症の患者さんはかかとでこぐ傾向があることです。十分なデータがそろって効率的なプログラムを組むことができれば、リハビリ期間が従来より短縮できるかもしれません。」

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COGY+は車いす専用ではなく、汎用性の高いアプリでもある。「COGYと切り離しても足圧測定に使えるので、健常者にも利用の幅が広がっていくといいですね。普段履いている靴にインソールを入れて、O脚、X脚の矯正にも使えるし、モデルウォーキングの練習もできます。
 スポーツ分野での活用もおもしろそうです。実際、体育大学の先生がスキーの重心移動を見せるのに使っています。まず手本となる動きのデータを記録したら、学生がインソールを装着して手本データと同じように動きます。手本データと違う動きをしたらその場で細かく修正できますし、効率的に体で覚えられるわけです。」このやり方で、初心者も問題なくスキーが滑れるようになるという。

 また、COGYとGoogleマップが連携し、VR映像を見ながらバーチャル散歩ができる『COGY VR システム』も機能拡張したいと考えている。「ある施設でバーチャル散歩のデモンストレーションをしていたところ、『皆で江ノ島の施設を訪問するので下見をしたい』とリクエストされました。ストリートビューで下見しながら「ここは車いすで入れないね」などの確認をしたのですが、その間ずっと会話が弾み、皆でワイワイと楽しそうなんです。

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 その様子から『バーチャル町歩き』を思いつきました。商店街の店舗をVRで見て周り、実際に会話や買い物ができるようにならないかと考えています。バーチャル町歩きとオンライン決済が組み合わさり、自宅や施設にいながら町歩きが楽しめる、それがきっかけでリハビリが進めば、実際に商店街へ出かけられるようになるかもしれません。
あるいは、ある種の認知症の人の記憶に残る、過去の記憶、この場合は昔の町並みを散歩してみると、過去の自分として楽しんでもらえるかもしれません。

 「プレイステーションとつないでほしい」というリクエストもあり、eスポーツで何かできないかと考えています。脳性麻痺でゲームができないお子さんも、COGYに乗ってeスポーツで友達と対戦することができるようになるかもしれない、そうすれば将来、eスポーツのパラリンピックが始まる可能性があるかもしれません。
 未来の車いすは、障がいのあるなしに関わらず、生活に密着したものになると考えています。私も含めて、皆、将来は車いすのユーザーになるでしょう。

 その時、後ろから押してくれる人はいるでしょうか?他人事ではないのです。超高齢化社会だからこそ、車いすで元気に楽しく暮らせる社会に変えなくてはいけないんです。障がいがない人もCOGYを身近な乗り物としてとらえてほしいと思います。
今の若い世代はクラウドファンディングに馴染みがあるせいか、『みんなでお金を出し合って、COGYを友人に贈りたい』というお客様もいらっしゃいました。車いすをプレゼントするなんて、新しい感覚だと、ファンが動く時代だと感じました。

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 移動の手段として、自動車が馬に取って代わるのに50年かかっている。それを考えると、今後、高齢化が進む国々にどのような変化が起きるのか。その時、障がいは自分とは関係のない〝不運な〟出来事ではなく、誰しもが関わる問題として考えるように人々の意識が変わっている必要があるはずだ。そこで、COGYのようなまったく新しい発想の車いすが登場し、社会インフラの1つになる。例えば将来、シェアサイクルの隣に「シェア車いす」が並んでいるなどという場面もあるかもしれない。車いすに乗る人が取り残されあきらめるのではなく、当たり前のように前向きに楽しく暮らせる社会は、誰にとっても生きやすい社会に違いない。

プロフィール

鈴木堅之(すずき・けんじ)
株式会社TESS代表取締役。1974年生まれ、静岡県伊豆市出身。盛岡大学文学部児童教育学科卒業後、知的障害者更生施設指導員、山形県公立学校教員を経て、2008年に東北大学発のベンチャー、株式会社TESSを創業。人間の反射を利用する世界初の“足こぎ車いす”「Profhand(プロファンド)」を製品化。障がい者も健常者も共に希望を見出せる社会の実現を目指して、途上国への展開にも力を入れている。

※ 「Profhand」は「COGY(コギー)」の旧名称

2018/10/23

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