NTTコムウェア
コム人対談
松尾勇二
ITの多面性
松尾勇二
ITマーケットを読む
松尾 ビジネス社会、ITマーケットにいろいろな変化が起きている今は、我々にとって既存のマーケットに進出するチャンスだと感じています。
ひとつは、技術の流れ。これまでの伝統的なメインフレーム中心の時代から、サーバークライアント型のオープンな技術を使い、様々なハードウェアを適切に組み合わせてシステムを作っていく時代へ、がらっと変わってきています。我々は、そうした新しい技術とサービスを低コストで迅速に提供できることで評価をいただいています。
もうひとつは、様々なビジネスシーンで起きている再編、統合などの変化。そうなると、情報システムの変更が最優先される。昔のそろばんに戻るわけには絶対にいかないわけです。
矢野 世界的にIT不況といわれる厳しい時代ですが、新しい活路もまた見られるのではないか、というお考えですね。
松尾 IT不況というのは、むしろハードウェアの不況であって、不況ではない部分もあるわけです。実際、ITシステムを構築していくニーズはそれほど衰えていない。不況になれば、会社間の優劣が鮮明になり市場での選別が始まります。コンピュータネットワークを入れることによって、競争力が明らかに違ってきます。生き残るためには、ほかは削ってもIT投資はやらざるを得ないというところがあります。
矢野 なるほど、これからはソフトをいかに使いこなすかがより重要になってくる。再統合、再編成などによるIT設置が必要になってくる、ということですね。
松尾 ハードウェアを持っていたことが有利だった時代は、過去のことになるでしょう。
矢野 その点、「コミュニケーション・ソフトウェア」という名の通り、NTTコムウェアにとっては、これからの時代、有利なことは間違いない。時代の変化がチャンスだということですね。
松尾 その象徴的な例がIBMだと思います。IBMはハードウェアからソフトウェアへと事業の比重を移してきた結果、この時代でも増収、増益を達成しています。
矢野 IBMは、NTTコムウェアが自分たちの強みを生かして進むためのビジネスモデルであると。
松尾 IBMのルイス・ガースナー会長が来日したときお目にかかったのですが、彼が手がけたのがまさにハードウェアからソフトウェアやサービスへビジネスの主軸を移していこうということでした。彼は、就任して10何年たつのですが、「ハードウェアをすべてコモディティ(commodity:日用品)化する」と言っていたのが非常に印象に残りました。コモディティ化には価格をものすごく下げざるを得ない。それも2割、3割ではなく、10分の1とか100分の1とかいった思い切ったコストダウンを実現しないと、ハードウェアビジネスは生き残れない。しかし、ソフトウェアやサービスの世界は、差異化ができるから付加価値が取りやすいのだ、と。
矢野 なるほど、そこに着眼して、IBMはハードからサービスやソフトへ切り替えたということですか。
松尾 彼はそれで実績を上げてきています。最適のソリューションを提供するには、IBMのハードウェアにこだわらない。ヒューレット・パッカードでも富士通でもどこでもいい。アウトソーシングにしても、例えば、銀行の情報システムサービスを、それまでのアウトソーサーより1、2割コストを下げて提供することで、そっくり引き取ったと話していました。ということは、IBM製品ばかりでなく、日立や富士通などいろんな会社のメインフレームも引き受けてしまおうということなんですね。
矢野 それこそ、NTTコムウェアのコア・コンピタンスだと。
松尾 ええ、我々はもともとマルチベンダーです。今NTT向けにつくっているものにしても、日立や富士通、IBM、NECであってもかまわないわけですから。
そういう意味では、ルイス・ガースナー率いるIBMが目指しているビジネスモデルを、我々は既に実践してきているとも言えます。ただ我々はまだIBMほど筋肉体質でないし、相手のビジネスを理解する力も不十分です。そこの部分をどう構築し拡大していくかが、私どもの会社にとって非常に重要になってきていると思っています。
矢野 会社としてこれからやるべきことはたくさんあるし、またやれるという強い気持ちをお持ちだということですね。ハードからソフト中心の世の中になってきたのは、あらゆる情報がデジタル化したことと密接な関係があると思います。一時的には混乱もあるでしょうが、僕は非常に面白い時代でもあると思っています。
松尾 そうだと思います。通信ネットワークとコンピュータが今のように密接に結びついたのは、日本ではここ数年ですよね。インターネットによって爆発的な変化を遂げた。しかも技術は日進月歩で進化し、ユーザーニーズもどんどん動いている。ブロードバンドが普及すれば、ビジネスもまた変わっていくだろう。そう考えると、まだまだITの入り口にいるな、という感じがします
Big IT……BtoBのIT企業で、技術に定評。
Challenger……「お客様を理解する」営業の強化が、課題。
Chance……IT不況、技術改革、企業再編…時代の変化は進出のチャンス。
Business model……ハードからソフトへ転じたIBMがビジネスモデル。
Cyber literacy……サイバー社会の読み書きそろばん。
Commitment……今、技術が問われていること。
Paradigm shift……加速するバラタイムシフト。
Tolerance……多様な価値観を内包しつつ歩むには。
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