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松尾 |
ITでグローバル化が進んで、アメリカン・スタンダードというのが世界中に広がっていますよね。日本はまだ固有の言語を持っているし、何千年の文化が残っているとは思うのですが。
何かで読んだブータンの話が印象的でした。ブータンにテレビが入り、インターネットも入るようになったところ、あらゆる情報がインドからのものになってしまった。すると言葉から生活習慣までブータン独自の文化が、インド文化に席捲されてしまった。子どもたちがブータンよりもインドのほうがいいと言うようになって、親世代が嘆いている…というのです。 |
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矢野 |
身につまされるような話ですね。本来ITは、多言語国家というか、多元的な社会をつくり上げるのに適したツールのはずなのに、それが政治的文脈、経済的文脈の中で、逆に一極化や均一化に向かう現象が起きている、ということですね。 |
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松尾 |
日本にも地域の祭りがあるように、世界には様々なローカルな文化があります。そういうものが、消えていっていいのか疑問を感じます。希少生物を保護するように、ローカルな文化を守っていかなきゃならない。そうでもしないと、なにかチャカチャカした薄っぺらな文化が世界中をのし歩くことになりかねない。いや、昔は良かった…などと回顧趣味のことを言うつもりじゃないんですけど、ね(笑) |
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矢野 |
多元的な情報を知らせていく、というメディアの役割も後退していますね。同じようなニュースばかりが流れる、という風潮ですからね。
松尾さんはどんなIT社会が来たらいいなと思われますか。ITへの夢をうかがわせてください。 |
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松尾 |
今お話してきたような、多様性のある社会であってほしい、ということです。IT化の途上では、均一化や、強い文化が弱い文化を凌駕するというようなことが起きると思います。それを防ぐ方法論と英知が必要でしょう。ITはヴァーチャルとリアルの差をどんどん縮めていくでしょうが、コピー万能の世界になると、人間のリアルな五感が奪われはしまいか──私がこんなこと言うのも何だけど(笑)。 |
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矢野 |
いやいや、技術が人間社会とどう切り結んでいこうとしているのか、とても大切なことを言われたと思います。 |
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松尾 |
サイバーリテラシーと同じことだと思いますね。あらゆるものがそうであるように、技術にも100%いいことばかりでなくて裏腹の問題がある。さっき矢野さんが、「COMZINE」での対談を多角的な視点で進めてくださると言ってましたね。ありがたいと思います。ITは私どもの主要なビジネスですが、ITの持つ多面性を、いい点も、問題含みの点も含めて、いろんな議論が交わされる場所がこのホームページ「COMZINE」であってほしいと思っています。 |
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