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矢野
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北見工業大学の非常勤講師をされているようですが、何を教えているのですか。
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田澤
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情報科学概論です。ネット検索、エクセルやワード、パワーポイントなどの実践的な使い方を教えています。気合いを入れて教えていますから、8割〜9割の学生は役に立つと言ってくれています。
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矢野
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ネットオフィスそのものは地域と関係ありませんが、田澤さんは講師の他に「北海道みちとくらしと未来のネットワーク」委員なども兼務しており、地域活動も重視していますね。
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田澤
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この8月には財団法人地域総合整備財団(ふるさと財団)による「平成16年度e-地域ビジネス支援」の助成対象事業に採択され、北見地域を対象とした「地域発信型Web観光クーポン事業」を始めることになりました。これは北見地域でWebクーポンを発行し、オホーツク地方の観光客誘致や地元商店の販売増を図るもので、地元のSOHO(在宅)ワーカーを活用した営業体制なども考えています。
やはりネットオフィスとローカルオフィスの両方で大きくならないとダメだと思うんです。奈良オフィスもでき、ようやく100人体制からの脱却を目指しますが、将来、1000人体制にするにはローカルオフィスは少なくとも5カ所は必要でしょうね。
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矢野
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最近の日本のIT社会についてのお考えを。
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田澤
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大それたことは考えていませんが、とくにお話ししたいことは、今までのIT化は道路、つまりインフラ作りであり、これからそのインフラをどう活用するかを政府や企業にもっと考えてほしいということですね。
バーチャル空間で働く仕組み作りを早くしないと、ますます東京への一極集中は強まる。先ほど申し上げたように、ネットをサブと考えている限りは今の状況は変わらないと思うのです。在宅ワーカーといっても、週に1回、オフィスに通えることを条件としたら、離島や北見のような地域は不利です。ネットでもっと働けるようになれば、少子化にも少しは歯止めがかかり、一極集中が是正され、高齢化社会にも役に立つのではないでしょうか。
もう一つは子どもたちへの教育です。佐世保で小学生の痛ましい事件がありましたが、子どもたちにとってネットの利用が当たり前になってしまった今、教育が必要です。私はもともと先生になりたかったので、そのことが気がかりなんです。
子どもだけでなく、大人の教育も必要ですよ。これまでは大企業で教育された人をワイズスタッフは活用させてもらっていましたが、今後は教育する場をより充実させて、どこに住んでいても仕事ができるようにしたい。ビジネスが一段落したら、教育に取り組みたいです。
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矢野
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2003年の人口動態統計では、ついに出生率が1.29になりました。子どもを作らない社会になった今、働きながら子育てをできる仕組みを作らないといけません。ネットオフィスはそれに大いに貢献しますね。
子どもへの教育に関しては、ネット世界が否応なく子どもの生活に浸透していく中で、現実とネットの違いを教えないといけないですね。従来は現実を知っている大人がネットに入ってきましたが、いまの子どもたちは現実を知る前にいきなりネットに入り、そこから現実社会に出てくる。これまでとまるで違う人種が登場するということです。
サイバースペースの拡大は、現実生活にいい面と悪い面をもたらす。うまくサイバースペースを使うには知恵が必要です。その点、田澤さんはバランスが取れていますね。家族といっしょに住み、ローカルな地域に尽くしながら、ネットで仕事をしているわけですから。
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田澤
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やはりネットの中だけでは生きられないと思うんです。ローカルオフィスを置いているのはそのためです。完全にネットだけの生活などは無理です。だから、ネットがどういう世界なのか、早期に子どもたちに教える必要があります。小学1年生でもちゃんと教えれば理解できるはず。今が一番、過渡期なのかもしれません。
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矢野
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日本では親が安心できるから、あるいは他の子が持っているからという理由で、ケータイを無原則に子どもに与えています。アメリカではケータイでインターネットにアクセスなどほとんどできませんし、子どもにそんなツールを無造作に与えることはしません。日本の親は、ケータイのサイトで何が見られるのかさえ知らないケースが多い。だから、「親と子のサイバーリテラシー」が必要なんです。
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田澤
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まさにそうですね。子どもの教育も仕事も同じです。ネットという道具をどう使いこなすか。規制するよりは使い方を教えることが大切です。人生の途中で、ネットに出会った大人たちはネット世界を規制したがりますが、もはや規制しきれなくなっている。子どもにどう教えるか親がが分かってくれば、状況はよくなるでしょう。 |
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矢野
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今日は北見のローカルオフィスにお伺いしてお話をお聞きしましたが、さすがに快適な風土ですね。お話も楽しく、いろいろありがとうございました。 |