海野：マンションあるいは商業ビルの建設、運用の際に、NTTグループの一員であることを生かす戦略はお持ちですか。
牧：当社はNTTグループの一員であり、グループが有するテクノロジー― IT、電力、建築技術―を不動産サービスに活用していくことができるのが当社の強みといえますが、私はこれを前面に押し出すのではなく、あくまでバックグラウンドで活用したいと考えています。例えば最近問題になっている人手不足は、清掃にロボットを導入することで効率がアップし、センサーなどでのビル空調管理など、さまざまな部分でテクノロジーを活用し、より高度で快適なサービスを実現していく必要があると思います。
海野：かつてないほどの少子高齢化時代を迎え、サービス付き高齢者向け住宅など、御社の戦略はいかがでしょうか。
牧：当社ではNTTグループと連携し、「つなぐTOWNプロジェクト」を展開中です。この取り組みは、多世代のお客さまに世代を超えて長く住み続けていただくことをコンセプトにしています。分譲マンションの隣にサービス付き高齢者向け住宅（サ高住）を併設し、例えばマンションには子世帯が、サ高住にはその親御さんに入っていただく。あるいはマンション入居者が高齢になられ、支援を必要とされるようになった場合には、マンションに住みながらにしてサ高住のサービスを受けられる。または優先的にサ高住に移転していただくことができるということで、大変ご好評をいただいています。
海野：東京・目白の駅前に建設された商業ビルは、また別のジャンルということでしょうか。
牧：当社の事業には現在、大きく分けてオフィスビル、マンション、商業という3つの柱があります。この施設は「トラッド目白」という施設で、上層階には結婚式場も備えた全館商業ビルです。当初マンションとして開発する予定でしたが、地元の方々との話し合いの中で駅周辺に大きな商業施設がないことが分かり、計画を変更しました。おかげさまで開業以来とても多くのお客さまにご利用いただいております。

グローバルな視点で街づくりをサポート

海野：昨年4月に、新ビジネスデザイン室という部署を立ち上げられました。その経緯や具体的な取り組みがありましたら、お聞かせください。
牧：不動産業は他の業界に比べて、IT革命による影響が少なかったといわれていました。しかし、最近になってeコマースなどの激しい変化が表れています。新しい変化に対して必要な手を打っていくことが重要だと考え、新ビジネスデザイン室を新設しました。
海野：ビッグデータ分析、不動産×ITといったキーワードを出されていますが、期待される効果は何でしょうか。
牧：今後は、日本の不動産業界もさまざまな分野でICTを導入していくと思われます。当社もまたICT導入を拡大していく計画ですが、幸い、当社のバックグラウンドにはNTTの最新技術があります。グループと連携して計画を進めていきたいと考えております。
海野：御社は既にロンドンや米国などで物件を取得されておられますが、リノベーションやコンバージョンといった新しい事業を、海外でもお始めになるそうですね。
牧：ロンドンでは、銀行の元本店ビルをリノベーションしていますが、外観や内装などに厳しい規制がある中、現地のルールや慣行を踏まえながらも、日本の良さも加えて開発を進めています。また、ニューヨークでは古いビルのコンバージョンを手がけています。このビルがあるミッドタウン・サウスはもともと工業地域でしたが、最近はオフィスやマンションが増えて、ニューヨークでも一、二を争う人気スポットになりました。古いビルをIT系の方に人気のあるビルに変えていく。さらには歴史ある街を最新の街へと変えていく、という、非常にエキサイティングな経験をさせていただいています。
海野：私どもは、御社の基盤や営業支援システムなどを担当させていただいております。大変ありがとうございます。ご要望などありましたらお聞かせください。
牧：当社では、自社のIT部門に対して、これまで遅れていたITインフラの整備、時代に合った基幹システムの再構築、そして不動産事業への先進技術の導入という3点を重点的に推進するよう指示しています。ただし社内にはそのための人材が不足していますので、御社からも引き続き先進の技術をご提案いただくことで、当社の経営革新を進めていきたいと思います。御社には、必ずやお力添えいただけるものと、大変期待しております。ぜひ、よろしくお願いいたします。
海野：ぜひ、引き続きご支援をさせていただければと思いますので、これからもよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。