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現場監督に集中する負担を削減 建設業界の長時間労働をデジタル技術でどう解決できるか
現場監督に集中する負担を削減 建設業界の長時間労働をデジタル技術でどう解決できるか
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人手不足や長時間労働という課題を抱える建設業界では労働環境の改善が急務である。リアルな現場の声をきっかけに開発された「ゼネコンコラボ」のデジタル技術で、どのような改善が期待できるだろうか。

 昨今の建設業界の課題は総労働時間の削減だ。建設業界は長時間労働が常態化していたため、建設業の時間外労働は労働基準法による上限規制からこれまで除外されてきた。だが、その猶予期限は2024年3月で終了し、2024年4月からは他業種と同様に月45時間、年間360時間に規制される。労働時間の厳格化に対応するため、建設業界は急ピッチで業務改善を進めている。

 建設業界では特に現場監督にかかる負担が大きい。現場監督の業務は複数の関係者への作業指示や作業工程管理、安全管理、品質管理など多岐にわたる。加えて、対面や電話による指示が多く、人が入れ替わりながら同時進行で複数作業が進むため、現場監督によるマネジメントは非常に煩雑となり、認識のズレが生じてトラブルの原因になることもある。また、紙による情報共有や作業指示がほとんどであるため、変更が生じたら紙を回収して再配布するといった作業が当たり前のように続いている。

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現場監督の総労働時間が長い3つの原因

 業務プロセスを変えるだけではこうした課題の解決は不可能であり、改善を試みるためにはITシステムでのサポートが不可欠だ。NTTコムウェアが開発した「ゼネコンコラボ」はその名の通り、建設業界の課題解消に特化したプロダクトであり、関係者の情報をデジタル技術で連携することで、業務効率化および生産性向上を進めていくことを目的に開発された。

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NTTコムウェアの新谷真之氏

 同社の新谷真之氏(ビジネスインキュベーション本部 ビジネスインキュベーション部 プロダクト創出部門)は、「これまでお付き合いのある建設業界のお客さまから、業務効率化と労働時間短縮の課題について伺っており、ITの力でそれらを解決できないかと考えて開発したサービスがゼネコンコラボです」と語る。

現場監督の困りごとを「ゼネコンコラボ」の3つの機能が解決

 多くの業者との適切なコミュニケーションが不可欠な現場監督は日々さまざまな対応に追われており、労働時間が長くなる傾向にある。

 建設現場における情報共有の手間と連絡ミスの削減のため、「ゼネコンコラボ」は「ワークルーム」「チャット活用」「ドキュメント配信」の3機能を中心に、現場と管理者をサポートする。

ワークルームは現場の情報を自動的にデジタル集約できるバーチャルな空間

 現場監督は作業ごとにワークルームを作成すると、各作業の進捗(しんちょく)や課題への対処状況を管理できる。各作業者には自分の作業に関する情報が集約されて表示されるので、迷わず作業に着手できる。チャットによる作業報告は証跡として自動的に整理されるため、報告用に後からシステムに投入する必要がない。

 視点共有の機能も備えている。例えば現場で施工中の作業者が現場監督に不明点を聞きたいときは、スマートフォンで撮影した現場の様子を見せながら指示を仰ぐことができる。現場監督にとっても、これまでは現場に出向いて直接確認しなければ分からなかったことがリモートでも把握できるようになり、業務効率化につながる。

 「長時間労働の原因の一つは、コミュニケーションにおける手間や情報ロスによるものです。コミュニケーション環境をワークルームに統一することでかなり時間を有効に使えます」(新谷氏)

 通信業界の導入事例では、工事中のビルへの入退館や安全管理項目、工事結果などをワークルームで管理することで、作業者の工数を10~20%削減できた。同時に管理者もリアルタイムの作業進捗管理によって20~30%の工数を削減した。

チャット活用により現場でのコミュニケーションを高度化

 2つ目のチャット活用によって、個別の連絡だけでなく全体通知の手間も削減でき、現場監督の負担が大きく減る。電話でありがちな、相手不在による折り返しを待つロスは発生しない。電話では通知内容の証跡が残らないためにトラブルが起きていたが、チャットであれば履歴に記録されるため指示を徹底できる。

 ゼネコンコラボのチャット機能は、異なるアプリケーション(アプリ)間でもメッセージをやりとりできる。建設現場で広く使われているチャットアプリ「direct」「LINE WORKS」「Wow Talk」に加え、NTTグループが提供する「elgana」にも対応している。

 コロナ禍によって、建設現場でも体調管理の報告などにチャットアプリを導入する企業がある。先ほどのチャットアプリをすでに使っている場合、新たにアプリを導入しなくてもゼネコンコラボがインタフェースとなって関係者と連絡できる。

 「建設現場でチャットを導入する場合は、ゼネコンが利用しているアプリのアカウントを全ての協力会社に払い出す方法を取っていました。ゼネコンコラボを使えば、協力会社が対応アプリを使っていればそのまま接続できます」(新谷氏)

安心なドキュメント配信と効率的な情報アクセス

 3つ目のドキュメント配信機能は、スマートフォンなどのWebブラウザで作業に必要な図面などの書類を閲覧できることが特徴だ。建設現場では、設計変更や現場の状況によって当日の作業図面に変更が生じるのは日常茶飯事だが、このドキュメント配信機能によって、常に最新図面を活用した作業指示ができ、誤って古いバージョンを使うことを防げる。

 また、セキュリティの堅牢(けんろう)性の高さも特徴の一つだという。スマートフォンの位置情報を用いて、書類の配信を作業が必要なエリアだけに制限することが可能だ。作業範囲にいる人はWebブラウザで手軽に閲覧できる一方、エリア外の人には見えないようにして、利便性とセキュリティの両立を実現している。

 現場にいなければ書類を見ることができないため、導入企業の管理部門からは、いわゆる「仕事の持ち帰り」による働き過ぎを防ぐ効果も期待できるといわれている。

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建設現場でのゼネコンコラボ利用イメージ

クラウドカメラとのAPI連携で、さらにコラボしやすく

 ゼネコンコラボの新バージョン「V2」は2つの新機能を備える。一つはビジネスチャットのログ連携、もう一つはクラウドカメラとの連携だ。

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新バージョン「V2」で追加された2つの機能

 ビジネスチャットのログ連携は、建築現場の実情に対応した機能だ。これまで、現場監督が過去の作業でのやりとりを確認しようとすると非常に手間がかかっていた。そこで新たに、ゼネコンコラボのチャット機能を使ってコミュニケーションの履歴を確認できるようにした。

 「ワークルームに『タイムライン』の機能を追加しました。現場監督は過去の作業指示や調整経緯などのやりとりを確認できます」(新谷氏)

 現場監督が工期途中で替わることもある。それでも履歴を追うことで過去の工事の内容を把握できるため、短時間で監督業務の引き継ぎが可能だ。

 2つ目のクラウドカメラとの連携では、建設現場で広く導入されているNTTコミュニケーションズのクラウド録画カメラサービス「coomonita」(コーモニタ)を対象とする。

 coomonitaは現場に複数のカメラを設置して、リアルタイム映像を一元管理するクラウドサービスだ。マイクとスピーカーを内蔵し、現場とリモート通話できるカメラもラインアップにある。カメラにLTE通信機能を内蔵したモデルはネットワーク工事が不要であり、電源を入れるだけでクラウドに映像を送り始める。

 「coomonitaは、画質や音質が高いことや設置の手軽さで現場から好評を得ています。ビルなどの施設はインフラとして数十年使われるものなので、建設の過程を写真だけでなく映像として残しておくことが証跡として重要です」と、NTTコミュニケーションズの石井佑樹氏(プラットフォームサービス本部 アプリケーションサービス部 第二サービスクリエーション部門)はcoomonitaの利用が拡大する背景を説明する。

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NTTコミュニケーションズの石井佑樹氏

 映像をクラウドに保存する期間は1週間から1年まで7種類のプランから選ぶことができ、期限内にクラウドからローカルにダウンロードすれば現場の映像を全て保存することも可能だ。

 coomonitaのもう一つの特徴が、サービスのAPIを公開していることだ。これによってさまざまなクラウドサービスと連携できる。ゼネコンコラボとの連携もこのAPIによって実現した。

 coomonitaの映像をゼネコンコラボから選択して確認できるため、現場監督が管理できる情報量は格段にアップする。「ゼネコンコラボのワークルームで、映像やチャット、図面など、現場業務に必要な全ての情報を入手できるようになります。情報の入り口を一つにまとめることで、現場の作業者と監督は迷うことなく情報を活用いただけると思います」(新谷氏)

 今後は蓄積した映像やデータをAI(人工知能)で分析し、工程の進捗予測や危険予知などに生かすサービスも開発したいという。新谷氏は、「これからも、建設現場のコミュニケーションのデジタル化を軸にしてお客さまの声を生かした機能を追加していきます」と語った。

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2023/03/31

  • ※ 商品およびサービスの内容は、予告なく変更する場合がありますので、あらかじめご了承ください。
  • ※ 「ゼネコンコラボ」は、NTTコムウェア株式会社の登録商標です。
  • ※ 「coomonita」は、NTTコミュニケーションズ株式会社の登録商標です。
  • ※ その他、記載されている社名、商品名などは、各社の商標または登録商標である場合があります。
  • ※ 所属部署、役職等については、取材当時のものです。

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