|
矢野
|
ブロードバンドは企業の情報発信としても有効だといわれていますね。
|
|
松本
|
どうなんでしょうか。企業がプロモーションで利用する場合、収益を考えなくてもかまわないのですが、活発に使われているという話はあまり聞きません。
|
|
矢野
|
eラーニングなどいろいろな話題はあるが、話題のわりにはこれといった魅力的なソフトがないということでしょうか。
|
|
松本
|
結局、現在のブロードバンドでマスを対象にしたコンテンツ配信は非常に難しく、むしろ配信先を特定のターゲットに絞った試みの中から、注目を集めるようなものが出てきています。たとえばeラーニングの領域では、最近、企業だけでなく大学がブロードバンドを利用するようになっています。早稲田大学とリクルートは、全国の高校生向けの模擬授業にeラーニングを利用しようと、昨年の春休みと夏休みに実験をしました。今は少子化で、多くの大学では受験生確保のため、教員を各地の高校に派遣して模擬授業をおこなっています。早稲田大学の場合、首都圏以外の地方からの入学志望者が多いのですが、教員をそうした地方の高校に派遣して模擬授業を行うにはコストがかかる。そこでリクルートと提携し、ブロードバンドを利用した模擬授業の実験を行い、かなり好評だったようです。大学の志願者増加を目的としたものなので、コスト構造はよくわかりませんが。
|
|
矢野
|
アメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)やハーバード大学などでもネットで公開授業をおこないましたね。
|
|
松本
|
ある程度の数の受講者に対して配信するなら、ブロードバンドより衛星放送や衛星による映像伝送の方が安いかもしれません。代々木ゼミナールや東進グループなど大手予備校では、スカパー(スカイ・パーフェクTV)のチャネルを利用していますね。山口県下関市にある東亜大学も、昨年までスカパーの無料チャンネルで授業を放送していました。特定の会場への映像配信なら、スカパーと契約するのではなく、衛星による映像伝送の方がよいでしょう。こうしたサービスはNTTサテライトコミュニケーションズなどの会社が提供しています。
|
|
矢野
|
ところで松本さんは大学以外の場では、メディア・プロデューサーという肩書きで仕事をしておられるそうですが、同じ肩書きを名乗っている方は、ほかにもいるんですか。
|
|
松本
|
実はジャーナリストの福富忠和さんがメディア・プロデューサーという肩書きを使っておられたのを、私も拝借しました。というのも特定のメディアに限らず仕事をする中で、相手に自分が何をやっている人間か一言で伝えるのにとても便利な肩書きだからです。昨年はこの肩書きで、ある企業のプロモーション映像の制作をしたり、三鷹市のコミュニティサポーターズというNPOが企画する、多摩地域の学生を情報発信者とするインターネット放送局の立ち上げに協力したりしました。今年もメディア・プロデューサーとして、大学以外の場でいくつか仕事をする予定です。
|
|
矢野
|
マスメディア中心の時代から、そこにパーソナルメディアも合流する「総メディア社会」に向かうなかで、メディア・プロデューサーというのは現実に合致したネーミングだと思いますね。新聞も、雑誌も、テレビも、電話も、メディア単独としては論じられなくなり、すべてが融合していくなかで、プロデューサーとして具体的に何かを生み出していくには全体を見通すことが大切です。サイバーリテラシーと僕が言っていることも、そのことと大いに関係がありますね。
|