
「年甲斐もなく、野外ロックフェスに行ったら、マッシュされてさ」「されたんですか?」「そう、ステージ前で押されまくって。頭の上に人が飛び込んでくるし!」「先輩、それ、モッシュっしょ。」「えっ、マッシュアップじゃないの?」
「モッシュ」も「マッシュアップ」も、どちらもサブカルチャーから発生した音楽用語。「モッシュ」は「押し合い、もみ合い」と言う意味のロック用語だが、「マッシュアップ」は、もともと音楽用語として使用され始め、この数年ですっかり新しいビジネス用語として定着した。
「混ぜ合わせる」という意味の「マッシュアップ」がICT業界で盛んに使われるようになったのは2005年頃。インターネットの新しい時代に向けてのあり方を示唆した「Web2.0」という概念とともに、Webの新しいサービスの潮流として注目が集まった。これはWeb上でAPIが公開されているさまざまなサービスを組み合わせて、新しい情報、コンテンツとして提供するもので、既存のものを再編集するという手法が、DJを中心とした音楽業界で90年代後半から認知され始めたリミックスの手法と似ていることから、ICT業界に新しい用語として飛び火した。音楽での「マッシュアップ」は、まったく違う曲を重ね合わせることで、新しい曲としてリリース。当初は著作権法に触れることを制作者が認知しつつ、海賊版として販売され、正規の音楽販売ルートに乗るリミックスとは一線が画された。
Webにおける「マッシュアップ」プログラミングは、Googleマップなど地図サービスと店舗情報の連動に代表されるように既に活用が広がっている。複数のWebサービスのデータ連携が進んだことで、ブログとレコメンド商品の表示など、さまざまなサイトでシステムが構築された。言葉自体のキーワード性は、現在ICT以外の他業種に及びつつあり、企業が蓄積したデータや技術を、他の企業のデータや技術と組み合わせ、新たな商品開発、新規事業開発につなげるという意味で使用されている。


2 Many DJ's
『As Heard on Radio Soulwax Pt.2』
「2 Many DJ's」
ベルギーのバンドSoulwaxのメンバー二人からなる、マッシュアップを代表するDJユニットの作品。版権使用許可の問題から正規で発売されることが難しいマッシュアップ作品の中で、公式リリースされたCD。
