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明日につながる基礎知識

第27回 知っているようで知らないこのワード 「バックキャスティング」 ばっくきゃすてぃんぐ Backcasting画像 イラスト

バックキャスティングとは、未来を予測する際、目標となるような状態を想定し、そこを起点に現在を振り返って今何をすべきかを考える方法で、いわば未来からの発想法である。
現在、地球規模の問題となっている温暖化防止や持続可能な社会の実現など、これまでのやり方や考え方では答えが見つからない問題を議論したり、解決策を見つけるために用いられることが多い。

バックキャスティングは、1997年にスウェーデンの環境保護省が“Sustainable Sweden 2021(2021年の持続可能性目標)”というレポートをまとめる際に使用したことで知られるようになり、日本でも国土交通省や環境省などの長期ビジョン策定に活用された。
また民間でも、経営環境が不透明かつ変化の激しい時代だからこそ、理想とする将来像を先に描くバックキャスティングの方法で、10年、20年先の長期経営ビジョンを作成する企業が増えてきた。

バックキャスティングと対をなすのがフォアキャスティング(Forecasting)で、現状分析や過去の統計、実績、経験などから未来を予測する方法である。現在を起点として考えるので、台風の進路のように目指す方向がその都度変わり、遠い目標が定まりにくい。
日本のモノづくりにおいて“イノベーション”の重要性が叫ばれて久しいが、過去の成功体験の延長線上で物事を考えるフォアキャスティングの思考回路に陥りがちで、革新的な製品やサービスが誕生しにくいと言われている。

バックキャスティングとフォアキャスティングは、必ずしもどちらかを選ばなければならないというわけではない。現状のビジネスはフォアキャスティングで進めながら、バックキャスティングで設定した未来像へ向かう別のレールを敷いておくという方法もある。また、目標設定はバックキャスティングで、具体的なアクションプランはフォアキャスティングでというように相互補完的に使うこともできる。
モノづくりにおける“イノベーション”はもちろん、個人のキャリアプランでも、過去や現在からではなく、あり得べき未来から発想するバックキャスティングを取り入れてみる価値は大いにあるだろう。

今月の「バックキャスティング」なインフォメーション
2030年の心豊かなライフスタイルコンテスト
~未来のあたりまえを考える~
画像 2030年の心豊かなライフスタイルコンテスト ~未来のあたりまえを考える~

バックキャスティングの具体例を参照できるのが、本サイトだ。モノづくり日本会議「ネイチャー・テクノロジー研究会」が主催する「2030年の心豊かなライフスタイルコンテスト~未来のあたりまえを考える~」は、環境・エネルギー制約が頂点に達するとされる2030年をターゲットに、心豊かな未来の情景や自然を大切にする生活シーン、人間らしい暮らし方など、未来への提案力を競うコンテスト。本コンテストの応募者は4歳から80歳を超える人までと幅広く、それぞれが理想とする未来像を描いている。過去2回の受賞作品を見ると、バックキャスティングで描かれた未来像はどこか懐かしいテイストを持っているものが多い。その懐かしさは今や容易には手に入らないものだからこそ、到達するにはイノベーションが必要になると言えよう。

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