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明日につながる基礎知識

第25回 知っているようで知らないこのワード 「フリーミアム」 ふりーみあむ Freemium画像 イラスト

フリーミアム(freemium)は、フリー(free:無料)とプレミアム(premium:割増)を合わせた造語。基本的なサービスを多数のユーザーに無料で提供する一方、より高機能あるいは特別な追加サービスは有料で提供することによって収益を上げるビジネスモデルである。

商品やサービスを無料で提供するのは、化粧品や食品の無料サンプル配布があるように特段新しい手法ではない。こういった無料サンプル配布とデジタルのフリーミアムが根本的に異なるのは提供コスト。配布すればするほどコストはかさむサンプル品と違い、デジタルコンテンツの場合、基本サービスができてしまえば提供コストはほとんどかからず、「95%が無料ユーザーでも5%が有料ユーザーであればビジネスは成立する」といわれるほどである。

とはいうものの、有料サービスを利用するユーザーが増えないと、このビジネスモデルは成功しない。前提として、提供するサービス自体が魅力的である、簡単に利用できる、有料版との線引きが明確であることが条件となる。
フリーミアムの成功例としては、基本料金は無料だがゲームを行う上で有利となる特殊アイテムに課金されるソーシャルゲーム、人気レシピランキングなど有料サービスが用意されている料理レシピ検索・投稿サイト「COOKPAD(クックパッド)」、ネット上にメモを残すように情報を蓄積・検索できる「Evernote(エバーノート)」、オンラインファイル共有サービス「Dropbox(ドロップボックス)」などが挙げられるだろう。

興味深いのはリアル社会にもフリーミアムの波が押し寄せていることだ。例えば、日本マクドナルド株式会社は2009年、特定の時間帯に無料コーヒーを提供し、集客増に成功。また、株式会社リクルートライフスタイル じゃらんリサーチセンターはフリーミアムビジネスとして、19歳なら指定スキー場のリフト券代が無料となる「雪マジ!19」や、20歳男女をJリーグ観戦に無料招待する「Jマジ!20」を展開。2012年度の「雪マジ!19」では約10万8,000人が会員登録し、うち9割がゲレンデに行ったと回答。宿泊や飲食などスキー場周辺での消費活動に結び付き、フリーミアムが実現された。

今月の「フリーミアム」なインフォメーション
『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』
画像 『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』

『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』クリス・アンダーソン(著)、小林弘人(監修・解説)、高橋則明(訳)、日本放送出版協会

フリーミアムという概念は、2006年、米国のベンチャー投資家であるフレッド・ウィルソンが提唱。その後、2009年に米国の雑誌WIRED(ワイアード)の編集長クリス・アンダーソンが著したFREE:The Future of a Radical Price(フリー:ザ・フューチャー・オブ・ア・ラディカル・プライス)で紹介され、一躍注目を集めるようになった。本書は、発売と同時にネットで期間限定・無料公開され、ダウンロード数は約30万件に達したが、印刷版も好調でベストセラーとなった。

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