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世界IT事情

第3回 フランス、ボルドー発 「フランス国鉄はハイテクがお好き」

道具は同じでも、使う人が違えば、その反応も違うもの。「世界IT事情」では、世界各国のお国柄をご紹介しつつ、人々のITとの関わり方を、生活者の視点でご紹介していきます。 今月は、環境保護の先端を行くドイツ、ベルリンからお届けします。

「バーコード活用でリサイクルをスムーズに」
インプットされた情報たち

ドイツは環境への意識が高いと言われている国の一つだが、一口に「環境(あるいは環境問題)」と言っても、そこに含まれる内容はさまざま。住環境、都市交通、ゴミ、エネルギー、緑地整備、ビオトープ、自然環境の保全など多くのテーマがある。中でも毎日の暮らしの中で考えなくてはいけないのがリサイクルについてだが、ドイツでは、ここ半年くらいでITを駆使した「画期的な」機械、空き容器の回収機を見かけるようになった。

ビールケース2箱と飲料水1箱を返しにきた男性

回収機を説明する前に、まずはドイツのリサイクル事情を説明しよう。
ドイツでは、ビール瓶やジュースのペットボトルの商品価格には、容器の代金として約10円のPfand(預かり金)が含まれている。この容器は、スーパーやコンビニ、小さな食料品店で1本から回収しているので、多くの人は小売店に使用後の容器を持っていき、その預かり金を返してもらう。
だが、リサイクル意識が高い事が裏目に出ていたのか、これまでの容器回収のシステムはアナログそのもの。例えばスーパーでは、空き瓶やペットボトルを持ったまま買い物をしなくてはならなかったし、いざレジについたと思っても、空き容器の精算で待ち時間は膨れ上がる一方。しかもやっと自分の番になっても、そのスーパーで販売していない商品は、引き取ってもらえない。実際のところ、こんな面倒を押してでも、きっちりと容器を返し、容器の回収率はほぼ100%というドイツ国民の律儀さには感心してしまう。

容器リサイクルの救世主登場

そこに登場したのが、この回収機なのだ。この回収機はドイツ ファンドシステム社(以下DPG)という2005年設立の若い会社によって、スーパー全店に設置され、その利用法、付随する法律も同時に制定された。

遊びに行く前にお手伝いをまず済ませて

「空き容器回収機」の多くはスーパーの入り口付近に設置されている。まずは、ビール瓶を投入してみよう。特に向きなどを考える必要はない。バーコードが読み取れるように、瓶が自動で回転するからだ。ピッという音とともに、投入口右側にはめ込まれたパネルに「瓶/0.08セント」と即座に表示される。続いてりんごジュースのペットボトルを投入。「PET/0.25セント」の表示に続き、先に投入した瓶との合計金額が表示される。
コーラ0.15セント、ヴォルヴィック0.25セント、牛乳0.15セント、缶0.25セント…。次々に各容器代と合計金額が表示されていく。更にダース入りなどの箱も1.50セントで、箱ごと投入する口が回収機の下部にある。預かり金は、商品毎に細かく決められているから、レジで一つ一つやっていたら、時間がかかったのは当然だ。全て投入をしたら「EXIT」を押し、印字された紙を受け取って完了。印字されたPfand金額を買い物分から差し引いてもらえるのだ。
この回収作業がIT化された最大のメリットと言えば、このシステムを導入するにあたって、それまでメーカー毎に異なっていた「PET」の表示が、国の政策により回収機で読み取り可能なバーコードとリサイクルマークに統一された事。ということは、そう、買い物に行った先のスーパーどこででも、Pfandを受け取ることが出来るのである。これは、バーコードに商品毎に異なる容器の預かり金情報がインプットされており、後にDPG社を介して精算を行っているからだ。こうした仕組みも、もちろんITなくしては成り立たなかった。

受け取った印紙をよく見ると、「Einweg」と「Mehrweg」という区分けがされている。これは一度で使い捨てるべきペットボトルと、複数回使用するものの違いの表示だとか。バーコードはそこまでの管理もし、7回目以降になると廃棄される「情報」を持ってペットボトルは洗浄され何度も使用されているそうだ。廃棄されたものは、スーパーの有料袋(一枚10セント)や、包装用のビニール袋となって生まれ変わり、無駄と無理のないドイツのエコ美学を現実化していく。Pfand読み取り回収機は、すぐ手の届くところにある優しいITといったところだろう。

特派員プロフィール

進士恵理子(しんじ・えりこ)
4年間の雑誌制作を経てドイツに留学。今年10月からテキスタイルデザインを専攻する予定。ベルリンの音楽・ファッション・クリエイティブシーンにおける独自のスタイルを日本へ発信中。

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