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世界IT事情 ITを通じて世界の文化を見てみよう!第70回 ドイツ、カールスルーエ発

ベンツやポルシェの本拠地として知られるバーデン=ヴュルテンベルク州に属する、人口約28万人の都市。ドイツ連邦共和国の最高裁判所に該当する連邦憲法裁判所や連邦裁判所の所在地として知られる。フランス国境に近く、北部には工業地帯、南部には針葉樹に覆われた広大な森林地帯「シュバルツバルト(黒い森)」が広がる。

のんびり進化しつつある自動車運転免許証

画像 運転免許証の写真と現在の夫

左は夫の運転免許証の写真、右は現在の夫。幼い頃の面影がないとは言えないが、警察官が道路で免許証の提示を求めたとして、どうやって本人だと見極めるのか疑問。

有効期限は一生涯(だった)

自動車大国ドイツ。制限速度なしのアウトバーンは有名だが、ドイツ人の夫(57歳)の自動車運転免許証を初めて見た時は驚いた。そこには14、15歳のあどけない少年の顔と、幼い筆致の署名が。2012年末までに取得したドイツの運転免許証は、一生更新しなくていい仕組みだったのだ。2013年以降に取得した運転免許証は15年ごとの更新(再試験付き)制度に変更になったばかりだが、それでも15年というのは長い、と思う。というわけで、夫の運転免許証では、夫が初めてバイクの免許を取得した際の写真が今もそのまま使われている。日本で運転免許証と言えば、(少なくとも5年以内の)顔写真と現住所が載っており、本人確認書類としても有効だが、夫の運転免許証で本人確認をするのは絶対に無理だ。

昨年暮れに、私の日本の運転免許証をドイツの運転免許証に切り替えた。手続きは、ミュンヘンにある日本大使館で日本の運転免許証の内容を証明するための運転免許証抜粋証明書を作成してもらい、それと一緒に証明写真と日本の運転免許証を管轄の免許証交付局に提出するだけ。担当者の説明によると、日本の運転免許取得試験はドイツの運転免許取得試験よりも難しいので、切り替えのための試験が必要ないそうだ。(逆に、試験の簡単な国からの切り替えだとドイツでの試験が必要。) 2012年中だったので、この私の運転免許証も有効期限は一生涯となる。

画像 自動車学校

普通の家にしか見えないが、れっきとした自動車学校(Fahrschule)。家の前に停まっているのは教習用の車。

教習コースのない自動車学校

さて、その運転免許証を取得するための仕組みだが、希望者は日本と同様に自動車学校に通う。自動車学校といっても、街中のビルの2階などに、理論を教えるための教室と事務室があるのみ。日本では、理論を学びつつ、実技は自動車学校内の教習コース・模擬道路コースなどで練習して、仮免許を取得していざ街中へ、となるが、ドイツの自動車学校には教習コースがないので、ハンドルを握るのはいきなり街中で、ということになる。昨年末まで義理の息子が通っていた自動車学校では、理論授業の他に、6時間の高速道路教習、5時間の郊外運転教習、4時間の夜間運転教習が必修だった。自動車学校での必修授業を終えた後、筆記試験がある。この試験は、あらかじめ決められた試験問題900問の中から30問が出題されるというもので、試験時間は30分だが、義理の息子によると、10分程度ですべて回答できたらしい。というのも、この900問は、40ユーロ払ってIDとパスワードを自動車学校から取得すれば、事前にインターネットで閲覧することができ、模擬試験のように事前に練習することができるのだ。義理の息子は、9歳の弟や私の息子(16歳)と一緒に、ゲーム感覚で900問の予備練習をしていた。筆記試験に合格した後は、実技試験。教習車の助手席に自動車学校の教官、後部座席に審査員が座り、教官が一度でもブレーキを踏んだりするとアウト。合格すれば、その場で運転免許証が発行される。不合格の場合は、2週間待って再試験。その2週間の間にさらに必修授業を受ける必要があるかどうかは、不合格の度合いによって教官が決めるそうだ。
筆記試験も実技試験も一発で合格し、無事に運転免許証を取得した義理の息子、18歳。彼の運転免許証の顔写真が、父親の運転免許証の顔写真よりも年上なのは、いつ見ても愉快である。

特派員プロフィール

長藤かおり(ながとう・かおり)
2011年4月に訪問教授として渡独。2012年3月にドイツ人と婚姻し、ドイツ永住を決意。大学等で非常勤講師として数学を教える一方、Volkshochschule等での日本文化の紹介にも努めている。

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