ナビゲーションを読み飛ばすにはここでエンターキーを押してください。
COMZINE BACK NUMBER
世界IT事情 ITを通じて世界の文化を見てみよう! 第17回 オーストラリア、ブリスベン発
「『中高生に一人一台パソコン政策』の是非」
パソコン費用の半額を政府が負担

中高生の子供を持つ皆さん。あなたのお子さんは自分専用のパソコンを持っていますか? あなたはお子さんに、持たせたいですか?
中高生に携帯電話を持たせるかどうかについては、日本では既に「持たせる」が主流になりつつあるようだ。携帯メールを利用したいじめ、学校の「裏サイト」や出会い系サイトへのアクセスなどの問題はあるにしても、やはり便利さと「いざ」というときに連絡できるといった利点には代えられないということだろう。では、パソコンはどうなのだろう? 中学生や高校生がマイ携帯やマイテレビ、マイMP3プレーヤーを持つように、自分専用のパソコンを持つことはプラス面が多いのか、はたまたマイナス面が多いのか。

パソコンで宿題をするクリストファー君

パソコンで宿題をするクリストファー君。自分専用のパソコンはリビングルームにあるが、両親のオフィスにあるこのマシンを使うことも多いとか。

オーストラリア連邦政府は、「すべてのハイスクールの生徒(日本では中学生・高校生)に自分専用のパソコンを持たせる」ことを、教育政策の柱の一つにしている。その一環として、なんと1500豪ドル(1豪ドル=86円換算で約12万9015円))までの購入費の半額を、政府が負担してくれるのだ。つまり、13万円程度のものなら6万5000円、6万円程度のものなら3万円で購入可能となる。1500豪ドルを超える部分はリベート(政府からの補償)が利かず自己負担になるが、まあ、学生がワードやエクセル、パワーポイント、その他の教育用ソフトを中心に使うものであれば、それほど軽量かつ高性能ある必要もないので、13万円以内で充分な機能を持つものを見つけられるだろう。
オーストラリアは、「子供扱いせずに、とにかく何でもやらせてみる」という国だ。最初は「試用期間」で正式免許保持者の同乗が必要といった条件はあるにしても、自動車の免許は16歳から取得可能。飛行機の免許はなんと14歳から取れるくらいだ(空の方が、障害物がなくて安全ということらしい)。こうした「何でもやらせる」、いや「何でもやらせなければならない」という姿勢は、周りに助けてくれる隣人がほとんどおらず、「何でも自分でできなければダメ」だった開拓時代の名残であるという。実際、今でもテーブルやウッドデッキなどを「キット」の類を用いずに一から自分で作ったり、廃車寸前のクラシックカーを全部ばらしてリストアし、新品同様に仕上げてしまったりすることを「趣味」でしてしまう一般人はあちこちにいる。

 

子供の主張と親の意見

さて、では実際に中学生や親達はどのように考えているのだろう。現在、13歳のクリストファー・オコナー君は自分専用のデスクトップを持っている。「父や母は仕事で必要だし、妹のサラだって宿題に使うことがあるから、中学生になったらやっぱり自分専用のパソコンは必要になってくると思う。今は勉強用のソフトとインターネットでの調べものが中心で、ゲームはフライトシュミレーターくらい」とのこと。

お父さんのマイケルさん

お父さんのマイケルさんは父親としても、またパソコンを売る立場からも、「家族でよく話し合い、ルールを作る事が必要」と説く。

クリストファー君の父親のマイケルさんは奥さんのコリンさんと共に、自宅にオフィスを構え会社や学校、そして個人に、文房具から事務用品、パソコンや周辺機器を一括して納品する仕事をしている。政府補助はパソコン本体だけでなく、周辺機器からインクカートリッジ、プリントアウト用の紙といった備品までカバーされるから、それらすべてを一度に注文できるマイケルさんのお店は重宝がられていて、多くの家庭に納品したという。

「これからの時代、パソコンのスキルは絶対に必要ですから、中学生から持たせるのはとても良いことだ。もちろん、有害サイトなどの問題はあるが、親と子でよく話し合い、ルールを決めれば解決できるはず」。オコナー家で決められているルールには以下のようなものがある。「有害サイトへのアクセスをブロックする、強力なフィルターを使う」、「親がインターネット閲覧の履歴をチェックする」、「パソコンは子供部屋ではなく、リビングルームやお店の事務所など、親の目が届く所で使う」。
マイケルさんのルール作りの話を聞いて、こんな風に感じた。すべての道具は使う人や使い方によって、良いものにも悪いものにもなる。パソコンもまたしかりだ。

特派員プロフィール

柳沢有紀夫(やなぎさわ・ゆきお)
1999年にオーストラリア・ブリスベンへ家族移住。15歳、13歳、10歳の三児の父。『極楽オーストラリアの暮らし方』(山と渓谷社)、『オーストラリアで暮らしてみたら。』(JTB)、『日本語でどづぞ』(中経出版)など著書多数。
http://homepage3.nifty.com/cafeaustralia/

Top of the page

月刊誌スタイルで楽しめる『COMZINE』は、暮らしを支える身近なITや、人生を豊かにするヒントが詰まっています。

Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2003-2015

[サイトご利用条件]  [NTTコムウェアのサイトへ]