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世界IT事情 ITを通じて世界の文化を見てみよう!第56回 イギリス、ニューカッスル発

イングランドの東北部タイン川沿いに位置する人口30万人ほどの都市。産業革命の時代には造船業によって栄え、近隣の村の出身であるジョージ・スティーブンソンが蒸気機関車の会社を設立した。日本との貿易も盛んで、現在でも、北東イングランドには日本企業が進出している。街の中心には、地元出身の首相で、紅茶の銘柄としても知られるアールグレーのモニュメントが建ち、地元のサッカークラブ、ニューカッスル・ユナイテッドのスタジアムもある。

こんなに違うイギリスの小学校

画像 下校時の様子

下校時は、親同士のコミュニケーションの場でもある。

4歳でピカピカの小学1年生になると

イギリスの小学校は4歳になった9月に始まる。日本なら今どきはネットで情報収集をしたり、必要なものを買いそろえたり、無事「ピカピカの1年生」にさせるべく、親も慌ただしい日々を送ることだろう。果ては入学式の衣装も親子ともども頭を悩ませる。しかしイギリスでは様子が違う。
まずもって、入学式というものがない。初日に登校するのは数人の新入生のみ。その後、日ごとに数人ずつが加わり、 1週間くらいするとクラス全員の顔がそろって本番の授業が始まる。初登校は一定の期間が設けられ、「○○ちゃんは、何日何時に初登校」「○○くんは何日何時」と指示された通知が来るのだ。これはどうも児童が学校や担任の教師に、また担任が新しい児童たちに少しずつ慣れていくようにとの配慮らしい。
登校期間初日までに、学校のマークの入ったジャージの制服、学校の名前の入った手提げ袋のようなカバンは購入するけれど、鉛筆やノートは学校で用意してくれるので、入学準備もごく簡単。まあなんて手間がかからないことと喜んでいたのだが、学校が始まってみると、そうとばかりも言えなかった。というのは、子供だけの集団登校はなく、保護者が各自子供を学校まで送り迎えしなければならないのだ。車で送迎する保護者も多く、登下校時には排気ガスが気になるほどの交通渋滞が発生する。
ところが、このように親も毎日学校へ通う割には、学校内のことは、いまひとつ不透明。毎年使い回しされる教科書は授業中に貸し出されるのみで、家庭には持ち帰らないから、子供がどんなことを習っているか知る由もない。授業参観日や学級懇談会、家庭訪問もなく、年に一度か二度ある個人面談は児童一人につきわずか10分ずつ。学年末に一度持ち帰る通知簿には、学校での子どもの様子が長々と綴られており、書くのはさぞ大変だっただろうとは思うものの、「オール5」「満点」といった日本のような成績はなく、自分の子どもの「成績」は、分からない。

画像 通知簿

通知簿。教科毎に評価が記述され、学校での様子などが事細かに記されている。

何かと多い休みと自主参加型の学校生活

イギリスの学校にも、日本とほぼ同じ長さの春休み、夏休み、冬休みがある。ところがイギリスには、これらの長期休暇以外にも、学期の中間に1週間ずつの休みがある。と言うことは、日本の学校の授業日数と比べると、イギリスの学校は年間3週間ほど短いということになる。
学校の掃除は、朝の始業前などに、掃除婦(夫)がするので、子どもの掃除当番は存在しない。給食当番も存在しない。学校給食はビュッフェスタイルの食堂で取り、ディナーレディーが給仕してくれるからだ。中には家からお弁当を持って来る子どももいる。
運動会はあるが、いたって簡素で保護者の見学者も少なめ。その他、参加自由の学校祭のようなものもある。高学年になると企画される修学旅行も参加は自由である。
入学式もないから、当然と言うべきか卒業式もないし卒業証書も出してはくれない。それでも、うちの息子の場合は、最後の授業日に、色とりどりのペンでクラスメートたちがサインしてくれたポロシャツを着て帰ってきた。それが小学校生活最後の記念の品となっている。
イギリスでは、掃除や給仕を子どもが行うことによってその職業を奪ってはいけないと考えているようだし、学校給食も、嫌いなものを無理して食べるより、自分の好きなものを選んで食べることができるようになることが、教育だという節もある。イギリスに暮らして、文化の違いには多々遭遇したものの、息子の小学校入学時には、本当に「こんなに違うのか…」と驚かされたことが多かった。今、息子は、高校卒業を控えて、小学校当時のカルチャーショックも良い思い出になっている。

特派員プロフィール

ギブソンみやこ(ぎぶそん・みやこ)
在英20年。イギリス暮らし、教育、観光情報などを現地から発信するフリーライター。
http://fromuk.blog101.fc2.com/

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