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世界IT事情第11回 オランダ、アムステルダム発 「IT競り市で生花産業は花盛り」道具は同じでも、使う人が違えば、その反応も違うもの。「世界IT事情」では、世界各国のお国柄をご紹介しつつ、人々のITとの関わり方を、生活者の視点でご紹介していきます。 今月は、チューリップと風車の国、オランダからお届けします。![]() ![]() オランダという国名を聞いて、万人が想像するのは「風車とチューリップ」ではないだろうか。国花でもあるチューリップは、原産地こそトルコだが、「ヨーロッパの庭」なる美しい異名をオランダにもたらした存在だ。
オランダの街を歩くとまず気が付くのは、どこへ行っても花が手軽に買えること。専門店に始まり、小さな食料品店や移動店舗、ガソリンスタンドに至るまで、楽しく迷いながら気軽に購入できる。これら花の存在は、オランダ人のホームパーティ好きと関係があるかもしれない。特に理由などなくとも、自宅に親戚や友人を毎日招待しあい、コーヒー片手に談笑するのは、代表的なオランダ文化の一つ。そしてその場に欠かせないのが、花だ。相手の家を訪れる際、手土産として花束を持参するのだ。
![]() 現在に至るまでその管理法は、改良を重ねながら用いられているが、生花の販売・流通に関しても、これまた然りである。それではここで「オランダの誇り」と称される、生花中央市場「フローラ・ホランド」を紹介しよう。ここは花の競売から運送まで全てがシステム化された生花の競り市場で、約4700人が働いている。オランダ国内だけではなく、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、南米等の世界各国から輸入された花がここに集まり競りにかけられて卸業者の手に渡るのだが、その競りもITで実に快適に行えるという案配だ。
市場で使用されているのは、壁にかかる39個の、丸い大きな競り用時計。これにはそれぞれ花の種類が記されているので、買い手はどの競りに参加すればよいかが見てすぐにわかる仕組みになっている。バイヤーは、円形の競売席に座り、座席の操作ボタンから時計盤の取引に参加する。といっても買いたい花が、希望値段になったらボタンを押すだけ。そこで売り手がOKを出したら商談成立。各地から集まるバイヤーの評判も上々だ。現在では、遠隔競売システムによって、会場へ足を運ばないバイヤーでも競りに参加できるという。 毎年、1月下旬になると花屋の店先に並ぶ初荷のチューリップ。オランダの人々は、待ってましたとばかりに購入し花瓶に活け、早速、窓際やキッチンに飾る。暗く長い冬を過ごす人々の心に春を呼び込み、精神を自ずと活性化させる不思議なパワーを持つとされる花、チューリップ。誰かの家を訪問する時、誕生日、見舞い、そして、特に理由がなくても、チューリップの花束をそっと差し出すオランダ人たち。私のPCの横にも、今、オレンジ色のチューリップが飾ってある。この国花が、いかにして自宅までやってくるのかに、改めて思いを馳せながら、時を忘れて眺め続ける私である。
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