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世界IT事情 ITを通じて世界の文化を見てみよう!第69回 オランダ、アムステルダム発

2012年9月、16歳の少女が誕生パーティの誘いをフェイスブックで行い、オランダ中から3,000人がつめかけた事件は記憶に新しいが、人とコンタクトを取る場合、電話やメールではなく、ソーシャルメディアを使うのが当たり前のオランダ。国民の約90%が所有するスマホやタブレットは、もはや生活必需品。だが国内経済は低迷し、現在失業率は10%だが、ICT業界だけは元気というところ。

「新サービス続々」で不況知らず!な、ネット業界

画像 ダ・ビューレン

公共預かりロッカー、ダ・ビューレンの内部。ロッカーの大きさに応じて料金が定められている。最も大きいサイズは1ユーロ(約100円)、最も小さいものは70ユーロセント(約70円)。

閉店後もアプリと決済サービスでショッピング!

オランダでは、生鮮食品からアイスクリームまで、思い立ったら即ネットで買える手軽さ。ネットショッピングも充実している。今、人気を集めているのが、閉店後でも店内の商品を即、購入できるサービスだ。いつでもどこでも買い物を!なるうたい文句で登場したこのサービスは、非常に簡単で便利。
まずは、各ショップ専用のアプリをダウンロードする。ショップ内に実際陳列されている商品の詳細が写真とともに掲載されたアプリを使いながら、希望商品を購入。支払いを決済サービスで済ませたら、翌日には希望商品が手元に郵送で届けられる、という仕組みだ。最近では、閉店後の店先に立ち寄り、ウィンドウショッピングしながら買いたいものを吟味する人の姿も見られるようになった。OLやビジネスマンたちからも好評なこのショッピングのスタイル、近い将来、特殊カメラを使って店内を見て回れる「ライブ・ショッピング」なるアプリが発表される見通しだという。
さらに購入した商品を受け取る新しいサービスも登場。日本では、ネットショッピングで購入した商品をコンビニで受け取ることができるが、これにヒントを得たとされるのが「購入商品専用預かりロッカー」だ。全国の主要駅に隣接したオフィス内に設置されているこのロッカー、一見、郵便局の私書箱のような感じで、黄色に統一されている。「De Buren(ダ・ビューレンは「お隣さん」の意味)」と呼ばれるこのロッカー、留守中に届いた荷物を預かってくれるお隣さんにかけたユニークな名称で、メディアを賑わせた。ネットで購入したものを、De Burenのサイトに登録。最も受け取りやすい場所にあるロッカーに配達依頼する。朝、申し込めば当日中に受け取りも可能なので、配達の都合に合わせて家にいるという必要もなく、特に仕事帰りのビジネスパーソンには好評だ。今年1月からは、オープン時間が午後11時までに延長された。さらに修理に出した電化製品やパンプスなどが、修理後、このロッカーで受け取れるサービスもスタートするなど、充実している。

画像 イネケさん

定年を前に、突然解雇されたイネケさん。職探しに奮闘中だが、予想外に自由時間が増え、それまでは週末しかできなかったネットショッピングを楽しむ余裕も。

宝くじ効果で郵便局おこし?

オランダのネットにおけるもう一つのヒットがくじ。景気こそ悪いが、福引や宝くじは、今も昔も大人気。約5年前のリーマンショック以降続く不況が、いまだに尾を引くオランダでは、特に40歳から定年67歳までの失業者数が増えているという。彼らはネットを使って再就職先を探すのだが、その合間のささやかな楽しみとして(もしくは、一攫千金を夢見て)、宝くじを購入する人が、このところ大幅に増えている。
これに目をつけたのは全国の郵便局。大手宝くじ会社と提携して福引のゲームアプリを考案し、話題を呼んでいる。当選者は、郵便料が半年間タダ。オランダは、隣国のドイツなどと比較すると確かに郵便料金が高め。そのため、郵便の利用が減る傾向にある。そこに登場したのがこの福引で、当選率もちょっと高めに設定されており、当たれば嬉しい郵便代無料の特典だ。その効果か、いったん遠のいた郵便局への足が戻りつつあるという。
失業こそしたものの、制限ナシの「自由時間」がある彼らは、今やネットのメイン利用者になり始めている。ICT業界のターゲットは、今後アラフィフ世代になるのでは、と考える関係者もいる。いずれにしても、オランダのネット業界は不況を物ともせず、といったところなのかもしれない。

特派員プロフィール

稲葉霞織(いなば・かおる)
ネット漬けのオランダ人たちを横目で見ながら、タブレットと格闘(?)する日々を送るライター。一年の半分はオランダで、あとの半年は、配偶者のリハビリに付き添いながらポルトガルで過ごしている。

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