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世界IT事情 ITを通じて世界の文化を見てみよう!第68回 オーストラリア、ブリスベン発

経済協力開発機構(OECD)が2012年に発表したデータによると、オーストラリア国内の外国生まれ人口比率は全人口の26.8%。加盟国中、ルクセンブルクについで2位となっている。しかも1960年代までは移民の45%はイギリスとアイルランドからだったが、2006年から2007年にかけては17%に減り、出身国のバラエティは世界中に広がった。移民が多いことのメリットは旅行しなくても各国の話が聞けること。そして本場のエスニック料理が手軽に食べられること!

おすしもいいけどカレー丼もね。豪州日本食見聞録

画像 箸でカツカレーを食べる人

箸で器用にカツカレーを食べる人。日本人でもスプーンで食べるよ、と言いたいところだが…。

おすしが怖くて食べられない!?

「キミたち日本人は、一日三食、すしを食うのか?」
オーストラリアに暮らして、13年。今まで日本に関するさまざまな「珍質問」に悩まされ、笑わされてきた。たとえば「日本語は右から左に書いてもいいんだよね?」。確かに配送用のトラックやワゴン車のボディの右側部分では、企業名や店名が右から左に書かれているように見える。昔の駅名も右から左に書かれていた(ただ調べたところによると、あれは「右から左」に書いているのではなく、「縦書きにして一文字ずつで改行」しているらしい)。
はたまたこんなのもある。「今度日本へ旅行するので、記念にサムライカット(おそらくチョンマゲのこと)にしたいんだけど、普通の理髪店でやってくれるのか?」。もちろん、チョンマゲにすることが「郷に入っては郷に従え」ではないことから説明した。とまあ、とにかく、異文化間コミュニケーションというものは、難しい分、おもしろい。
冒頭の「一日三食すし」もこの手の「珍質問」の一つだ。ただ考えてみれば、中国人はほぼ毎食中華料理だろうし、イタリア人も三食イタリアン。日本人は日本食だと思われても無理はない。今から10年以上前にその質問をされたときには、日本食と言えば「スシ、テンプューラ(「天ぷら」のなまった発音)」くらいしか知られていなかった。
「高級料理でなかなか手が出せない」というイメージのあった海外の日本食。もちろん、オーストラリアでもご多分に漏れず、10年ほど前までは「日本食なんて食べたことがない」という人がほとんどで、私の妻が小学校で巻きずし作りの実演と試食会を開いたところ、ゲテモノを食べさせられると思って泣き出す子もいる始末だった。そのときの具、生の魚でも納豆でもなく、かっぱ巻きだったんだけど…。

画像 写真付きの和食メニュー

オーストラリアのレストランでは文字だけでメニューを説明しているところが多いが、和食は通常、写真付き。そうしないとわからないからでもあるが、日本人が得意とする「かゆいところに手が届くサービス」でもある。

次に来るのはギョウザかスタミナ丼か

ところが時代は変わるものである。今や、巻きずしは「早い、安い、うまい、ヘルシー」ということから、オーストラリアのファストフード界を席巻中。ただし具はサーモンなどの生の魚よりも、チキンカツやトンカツ、エビフライやてりやきチキンなどが主流だ。太巻きと細巻きの中間くらいで、太さ4cm、長さ10cmくらいのものが一つ200円強。普通は2、3個で満腹になるから、ランチのお値段としてはかなり手ごろな部類に入る。「私が一番好きな料理は日本食。特にすし」というオーストラリア人も、今や全然珍しくない。
海外でのラーメン人気をご存じの方も多いかもしれない。「味千らーめん」などは海外でもう約700店舗もある。
オーストラリアに限って言えば、今、人気急上昇の日本食は、「丼物」だろう。一番人気はカツカレー丼。他にはカツ丼、牛丼、天ぷら丼、照り焼きチキン丼やチキン南蛮丼などなど。フードコートで最も長い列ができているのは、中華でもインド料理でもなければ、イタリアンでもメキシカンでもない。世界的に有名なファストフード店でもなく、日本の丼物屋さんなのだ(ただし、オーストラリア人たちよ。箸で器用に食べられるのを自慢したいのはわかるが、カレー丼はやっぱりスプーンとかレンゲのほうが楽だと思うよ)。
とにかく、こうして「スシ、テンプューラ」以外の日本食も楽しまれるようになったのは喜ばしいことだし、それはネット社会のおかげでもある。ブログやSNSで「日本で食べたこんなものがおいしかった」という話題がパッと広がるからだ。最近の注目株は「ギョウザ」。
今度日本にスキー旅行に行くという知人の夢は、「牛丼の食べ比べ」。さらに「スタミナ丼と立ち食いずしも試してみたい」そうだ。料理店経営の皆さま。ぜひ英語のメニューを!

特派員プロフィール

柳沢有紀夫(やなぎさわ・ゆきお)
1999年よりオーストラリア在住。最新作は『値段から世界が見える!』(朝日新書)。他に『子育てに必要なことはすべてアニメのババに教わった』(中経出版)、『日本語でどづぞ』『抱腹絶倒! 困った地球人』 (中経の文庫)、『世界ニホン誤博覧会』(新潮文庫)など著書多数。

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