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世界IT事情 ITを通じて世界の文化を見てみよう! 第15回 アメリカ、ロサンゼルス発
「国民的関心事ダイエットもネットで手軽に楽したい!」
ダイエットフード宅配サービスが人気

日本でもメタボリック症候群が問題になっているが、アメリカの肥満問題は日本よりもはるかに深刻だ。なにしろアメリカは世界一の肥満大国。成人人口の3割にあたる約7000万人が肥満で、街を歩いていても普通の椅子に座るのが難しいほど太った人をよく見かける。しかし2006年頃からは、過去20年以上続いた肥満人口増加が頭打ちになった。メディアが肥満問題を盛んに取りあげ、肥満解消に向けて努力する人が増えたのがその理由だと言われている。

「ニュートリシステム」のトップページ

現在急成長中のダイエットフード宅配サービス「ニュートリシステム」のトップページ。顧客は女性が約7割を占めるが、男性やシニア向けのプログラムもある。

たくさんの人が一生懸命やせようとしているアメリカで、今注目されているのがインターネットを利用したダイエットだ。
ネット上の肥満関連サービスには、エクササイズの方法や低カロリーレシピを提供する情報サイトや、ストレスをやけ食いで解消してしまう人のためのオンラインサイコセラピー、食事内容を入力するとカロリー計算をしてくれるサイトなど、実にいろいろなものがあるが、最近特に人気が高まっているのがダイエットフードの宅配サービス。一つの州全体に宅配しているような大規模なものだけでも40社以上あり、テレビでも「私は○○システムでこのすてきなボディを手に入れました!」などというコマーシャルが頻繁に流れている。
サービスの内容はどれも似たり寄ったり。まずインターネットで現在の身長や体重、今後どれくらいやせたいか、普段の食事内容はどのようなものか、といった情報を登録し、クレジットカードで料金を支払うと、その人に見合ったカロリー値の一日3回の食事とおやつが1週間分まとめて送られてくる。受け取った側はスケジュールに従って毎日それらを食べるだけ。面倒なカロリー計算や栄養のバランスを考える必要がないのはもちろん、買い物、料理、後片付けの手間まで省けてしまうという手軽さがウケて、仕事や家事で忙しい女性を中心に人気が高まっているようだ。
私の周囲を見回しただけでも、このようなサービスを利用している人はかなりいるようだ。先日、息子の通う小学校でボランティアをする機会があったが、そこでも「あれ、私もやってる。けっこうおいしいよね」「スナックメニューではチョコレートケーキがおいしかった。また頼んでみるつもりよ」などという会話が飛びかっていた。どうやら家族の食事は別に用意し、自分だけダイエットフードを食べているらしい。
食事の注文だけではなく、ダイエット仲間を見つけたり、掲示板に投稿したりできるようになっているサイトが多く、ネット上に作られたコミュニティ内で参加者が支えあってダイエットできるようになっているのもインターネットならでは。サイト内に作られたマイページには、毎日のエクササイズ量などを記入できるようになっていて、そこに書き込んだ体重を元に翌週のメニューと摂取カロリーが決められる。栄養士やトレーナーなどの専門家から、チャットやメールを通じてアドバイスしてもらえるところも多く、電話や通販では実現しなかったリアルタイム性も、人気に火がついた理由のようだ。

 

グルメ化でダイエットとは無関係の人にも人気に

他と違う特徴を打ち出して差別化を図る企業も多くなってきた。その代表的な傾向の一つは「グルメ化」とでもいうべきものだろう。
通常のダイエットフード宅配サービスの一日あたりの費用は15〜20ドル(1ドル=106円換算で1590〜2120円)。ところが最近では高所得者が集まるロサンゼルス、ニューヨークを中心に、一日40〜65ドル(同4240〜6890円)程度の豪華版宅配サービスが登場してきている。

配達されてくる朝食

老舗ダイエットフードサービス「ジェニー・クレイグ」から配達されてくる朝食の一例。見るからに美味しそうなメニューにはピザやラザニアなどのこってりした料理やケーキなども含まれている。

従来型との最大の違いは、冷凍されていない新鮮な食事が、週一ではなく毎日配達されてくる点だ。
例えば2005年に創業した「フレッシュダイニング」ではロサンゼルス周辺の家庭や企業にオーガニック食材を利用した新鮮なダイエットフードを毎日配達している。この会社はセレブの利用が多いことでも有名で、2年ほど前にも黒人の女性ミュージシャンがここのサービスを利用して30kg近くの減量に成功したと噂されている。妊娠中・産後用特別メニューを利用して、双子を出産後、瞬く間に元のナイスバディに戻ったという女優もいる。
セレブのお眼鏡にかなうだけのことはあり、メニューもなかなか凝っている。「ラベンダー風味の鴨肉、みつば、へーゼルナッツのサラダ」、「グリルした海老&ホワイトアスパラガス、しいたけ入りサラダ」などがその例。一流シェフの作ったそんな料理を家から一歩も出ずに毎日食べられるとなると、ダイエット中でなくても注文したくなるが、そういう人は私以外にもたくさんいるようだ。同社のホームページによると、利用者の6割はダイエットが目的だが、残り4割は「手軽だから」などのダイエット以外の理由で注文してきているという。
最近では「宅配フードでダイエットするなんてセレブみたいでカッコイイ」というイメージすらできつつあり、このようなサービスは今後もぐんぐん伸びていきそうだ。ただ唯一の問題はサービスの利用を止めた時どうするか。食事内容を全て人任せにしてやせても、その後、適正体重を自分で保っていくことはできにくいように思える。くだんのミュージシャンは、その後プライベートシェフを雇ったらしいが、一般人ではそうもいかない。一生インターネットに食事を頼ることになってしまうのだろうか? 
いや、それでもファストフードやポテトチップスに頼って暮らすよりはずっとマシなのだろう。

特派員プロフィール

Yukari Travis(ユカリ・トラビス)
ロサンゼルス市在住のフリーライター。カリフォルニアの健康、食、暮らしなどに関する情報を雑誌やウェブサイトを通じて発信している。近く『ニッポンの評判』(新潮社、共著)出版予定。

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