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ユニバーサルデザイン 益田文和
Vol.007 卵のカタチのホッチキス
 

上から見ると卵型、横から見ると甲羅を持った昆虫のようでもあり、ヘルメットのようでもあり、ひっくり返すとカニの腹のようなカタチのホッチキス。見るからに能天気で、その名も「たまほっち」と、そのまんまである。
上カバーの真ん中を手のひらで押すと割合に楽に紙を綴じることができる。「割合に」というのは、他の製品と比較して押す力が少なくて済むというわけではないからである。軽く押せるということで言えば、大きくて長い首を持った物のほうがテコの原理からいっても有利なのだ。
このホッチキスの特長はなんといっても卵形の上カバーを、手のひらでも、拳骨でも、腕でも、肘でも、何なら足でも、おでこでも使って真上から押せば良いという点である。そのことを可能にしているのは、柔らかい曲面を持った大きなカバーとともに、幅広で安定した底の形である。

殊更ユニバーサルデザインなどと言わなくとも、何らかの意図を持ってデザインされた製品はそれなりの特徴を持っており、だからこそ存在する意味がある。逆に言えばあらゆる長所を兼ね備えた理想的なホッチキスが一つあれば事足りてしまうということになる。ところが、そう簡単にいかないところが面白いのであって、だからこそ、何より堅牢さを誇るもの、一度にたくさん綴じられるもの、正確に綴じられるもの、軽く押せるもの、一番小型で軽いものなどさまざまあるなかから、使う目的や使う人の条件によって評価し選択する自由が求められる。より多くの選択肢を用意することこそユニバーサルデザインなのである。

「たまほっち」の場合は、手が多少不自由でも、ただの不器用でも、上から押せばとりあえず使える大らかさが身上で、また、形にもそのコンセプトが表れているいるから面白い。ホッチキスにもいろいろ個性があって、それを活かす機会がある。その辺りは人間に似ている。

ステープラー「たまほっち」:コクヨ/青、白、黄色 それぞれ一個525円

 
益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年

東京生まれ。

1973年

東京造形大学デザイン学科卒業

1982年〜88年

INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任

1989年

世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員

1994年

国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー

1995年

Tennen Design '95 Kyotoを主催

1991年

(株)オープンハウスを設立
現在代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している

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