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ユニバーサルデザイン 益田文和
いつの間にか抜けているコルクの栓
 

ワインといえばコルクの栓だが、コルクの材料となる木が段々減っているらしい。そう言われれば、最近コンビニなどで売っている比較的安いワインはスクリューキャップが増えたように思う。しかし、何といってもワインはあのコルクの栓を抜くのがだいご味である。だいご味ではあるのだが、なかなかうまく抜けないので、ワインの栓抜きに関する失敗談や笑い話を持っている人は多いことだろう。
ワインが生活の中に入り込んでいる人々にとって、毎日何度となく使うワインオープナーは、どこにでもある当たり前の道具だから、必要な時にそれがないなどということは考えられないのだろう。ある時、ウィーンから来日した建築家と工場での打ち合わせが済んで、彼がわざわざ本国から持参したワインを鞄から出して乾杯しようと言い出した。その時は、工場にワインオープナーなど置いてないので、職人さんに頼んでコルク栓にボルトを打ち込んでトルクレンチを使ってコルクごと引き抜いてもらった。
いざとなれば飲みたい一心で何とかしてしまうとはいえ、スクリューをねじ込んでも固くて引き抜けなかったり、逆にぼろぼろに崩してしまったりと、コルク栓はなかなか厄介なものである。誰でも失敗なく開けられるワインオープナーで、ガス注入方式や電動式のように大げさではないものとなると、やはりスクリュープル方式が良いだろう。ハンドルを右回りに回してゆくとスクリューがコルクに刺さってゆく。そのまま同じ方向に回し続けると、今度はコルクが引き抜かれてくる。そうやっていつの間にかワインが開いている。スクリューのハンドルを回すのに少し力は要るが、特にコツが必要なわけでもなく、レバー式のような派手な動きがない代わりに失敗も少ない。
30年来親しまれているスクリュープルに対して、今回紹介するのはちょっと珍しい、フランスの自動車会社プジョーブランドのもの。プジョーは1890年に自動車を作り始める前は、19世紀の始めにのこぎりを作って以来、コーヒーミルやペッパーミル、植木バサミ、自転車などさまざまな道具類を開発してきた。最近手がけ始めたのがワインアクセサリー関連の商品である。くれぐれも「飲んだら乗るな」は忘れずに。

ワインオープナー「Salma」/プジョー

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年

東京生まれ。

1973年

東京造形大学デザイン学科卒業

1982年〜88年

INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任

1989年

世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員

1991年

(株)オープンハウスを設立

1994年

国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー

1995年

Tennen Design '95 Kyotoを主催

現在

(株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。

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