COMZINE BACK NUMBER
ユニバーサルデザイン 益田文和
香り高いニンニクのチョッパー
 

オリーブオイルで炒めるだけのシンプルなスパゲッティが食べたくなって、ニンニクのみじん切りが必要なことに気付いた。ニンニクは刻みにくい。粒が小さく、形が定まらず、指先で押さえても包丁の刃を当てるとくるりと逃げようとする。ニンニクのみじん切りの名人芸を動画サイトで見ると、よく切れそうな包丁の先端を器用に使ってニンニクの粒に縦横に刻みを入れてゆき、最後の一刻みで見事にみじん切りが出来上がる。とてもあんなまねは出来そうもない。
包丁を思い通りに扱えない子供や高齢者、上肢に何らかの障害を持つ人々ばかりでなく、単に不器用なだけの我々も、ニンニクのみじん切りはあきらめたほうが良さそうだと思いつつ、何とか方法はないものかと道具を探してみると、ニンニクを調理するための製品は結構出回っている。皮をむくためのもの、潰すもの、刻むもの、スライスするもの、すり下ろすものなど、至れり尽くせりの品揃えで、みじん切り用のものも電動式のものからレバー式などいろいろある。とても、ニンニクの下ごしらえのためだけに、これだけの道具をそろえておくわけにもいかない。
一番難しそうなみじん切りが簡単に出来て、安全で手入れがしやすく、小さくて手ごろな価格のものを、と探して見つけたのがこのザ・ガーリックチョップ。ニンニクを模した形もかわいらしいが、中を開けてみると金属の刃のようなものは何もなく、本体と同じプラスチックの突起のようなものが並んでいるばかりのシンプルな構造だ。
この突起の間に挟まる程度の大きさに切ったニンニクを入れて本体の上半分と下半分を合わせ、ねじるようにして回してゆくと、はじめのうちはニンニクをぶちぶちとちぎるような抵抗感がある。この時、刃物で切るのとは違い、つぶすのと同じような現象が起こっているらしく、調理中の香り立ちが大変良い。この抵抗感が小さくなって、軽く回るようになれば出来上がりである。出来上がったみじん切りは底の部分を押すとボロッと鍋に落とすことが出来て手間がかからない。
オリーブオイルの中で、みじん切りのニンニク一粒一粒がちりちりとおいしそうな音を立てながら踊るのを眺めていて、次回はワインがらみのユニバーサルデザインにしようと思いついた。

Koopeh/ The Garlic Chop

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年

東京生まれ。

1973年

東京造形大学デザイン学科卒業

1982年〜88年

INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任

1989年

世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員

1991年

(株)オープンハウスを設立

1994年

国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー

1995年

Tennen Design '95 Kyotoを主催

現在

(株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。

Top of the page

月刊誌スタイルで楽しめる『COMZINE』は、暮らしを支える身近なITや、人生を豊かにするヒントが詰まっています。

Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2003-2015

[サイトご利用条件]  [NTTコムウェアのサイトへ]