かしこい生き方を考える COMZINE by NTT コムウェア

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ユニバーサルデザイン 益田文和
フックのついたバスクロック
 

少し前の都会では、街中どこを歩いていても、見渡せば一つや二つデジタル電光表示の時計が目に入って、腕時計はいらないとよく言われた。それほど公共空間にあふれていた時計がいつの間にかすっかり姿を消してしまったのはなぜだろう。
今、若者に時刻を聞くと、腕時計ではなく携帯電話を見て答えてくれる。気がつけば、身の回りのあらゆるものに小さな液晶表示の時計がついている。パソコン、車のダッシュボード、エアコンのリモコンから炊飯器にまで、小さな時計だらけなのだ。
しかし、それでも時刻が知りたいときに必ず回りにあるとは限らない。たとえば入浴中。風呂に入っているときぐらい時刻を気にしないでゆっくりしたいと思っていても、実際には見たいテレビ番組が始まる時刻が気になるし、朝であれば身支度の準備もあるし、順番を待つ家人のことも気になる。給湯器のコントローラーに小さな時計がついてはいるが、メガネを外していては読めない。見やすい時計を持ち込もうと思っても濡れることを考えるとそれもためらわれる。
このシンプルな時計は防沫仕様なので風呂場に持ち込んでも大丈夫。文字盤は、数字の書体、大きさ、針の長さと太さなどよく考えられていて読みやすい。しかし、この時計のデザイン上のポイントはなんといっても本体と一体になったフックだ。防沫仕様といっても防水ではないので浴槽に落としてしまっては故障する。狭い浴室には実は置く場所がほとんどないのだが、このフックがあるおかげでドアハンドルやタオルハンガーなどに簡単に引っ掛けられ、置き場に困らない。
このフックを生かせば浴室以外にもさまざまな使い方が考えられる。トイレのドアに下げるのも良いだろう。夏の海岸やプールサイドでビーチパラソルにぶら下げて風に揺れているのなども面白い。キャンプに持っていって木の枝に下げておけば、川遊びの子供に時刻を知らせることも出来る。
一つの特殊とも思える小さな問題を丁寧に解決することで、結果として製品の使い方が大きく広がるのもユニバーサルデザインの特徴なのだ。

バスクロック 防沫型 / 無印良品

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年

東京生まれ。

1973年

東京造形大学デザイン学科卒業

1982年〜88年

INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任

1989年

世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員

1991年

(株)オープンハウスを設立

1994年

国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー

1995年

Tennen Design '95 Kyotoを主催

現在

(株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。

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