

健康診断で「血圧が高めです」と指摘された方、いらっしゃいませんか?高血圧の原因はいくつか挙げられますが、その一つが塩分の摂りすぎ。特にビジネスパーソンのランチには、その落とし穴が潜んでいるとか。さらには暑さが続く夏の場合、うどんや素麺といった喉越しの良いものばかり、あるいは逆に元気を出そうと肉ばかり、という「ばっかり食べ」に陥る人が少なくなく、「いつものところの、いつものランチ」が知らずに健康を害していることもあります。今月は、夏バテを残さず、塩分に配慮した食品について教えていただきました。
堀知佐子(ほり・ちさこ)
管理栄養士、食生活アドバイザー、アンチエイジング料理スペシャリスト。京都の調理師学校で教鞭をとった後、京料亭「菊乃井」の物販事業部責任者を経て、2010年株式会社「菊の井」常務就任。08年アンチエイジングをコンセプトとしたレストラン「リール」を開業。栄養学、調理学の視点から健康と食事の関係を学ぶ料理教室の開催を始め、地方自治体の農水産物商品開発アドバイスや生産加工に関わるサポート等々活動も幅広い。著書に『みそと野菜でアンチエイジング』『100歳まで錆びない栄養レシピ』など多数。
「スタミナ丼で午後からも頑張るぞ!」は大間違い
ランチは、ビジネスパーソンの楽しみの一つだと思いますが、外食の場合、塩分の摂りすぎが気になります。塩分を摂りすぎると、余分なナトリウムを排出するために血流が多くなったり、腎臓に負担をかけることになり、高血圧につながると言われています。
特に、暑さが続く夏は、同じようなメニューばかり食べるという、「ばっかり食べ」の方が少なくないようですが、典型的なばっかり食べのメニューは、知らず知らずに塩分過多になっていることがあります。
代表的なメニューは二つあります。一つは、暑さに対抗しようと、肉ばかりを食べるパターンです。「お店のランチで肉」となると、肉と野菜を炒めて、比較的味つけを濃くした“スタミナ丼“のようなものが多くなりがちです。
もう一つは、うどん、素麺など喉ごしの良いものばかりを食べる方。第4回でも触れましたが、うどん、そばは塩分が多く、栄養価としても偏りが出てきます。

まず、スタミナ丼のようなメニューについてお話しましょう。
外食のランチは炒め物をよく見かけますが、多くの油を使って、肉などタンパク質を高温で加熱するという調理の方法は、細胞の老化につながる糖化が起こりやすくなりますので、疲労回復どころか逆効果。また味も濃いので塩分を摂り過ぎてしまいます。
そこで、塩分の排泄と糖化を防ぐことを目指して、夏に積極的に摂りたい食品がキュウリ、スイカ、冬瓜など瓜系の野菜です。今回はキュウリと、やはり疲労回復効果のある梅干しで和えた副菜をご紹介します。
キュウリのほんのり梅和え 1人分
材料
- キュウリ ・・・ 1本
- 梅干し ・・・ 2分の1個
- ゴマ ・・・ 少々
- 1 キュウリは半分に切り、斜めのスライス切りにする
- 2 梅干しはタネを取って梅肉をよく叩く
- 3 キュウリと和えてゴマ少々を振る
メニューもご紹介していますが、コンビニで梅干しとキュウリの漬け物(生があればなお良し)を買ってきても、もちろんOKです。
午後のパフォーマンスを落す一方のうどん、素麺

もう一つのばっかり食べは、うどん、素麺。特に素麺は、製造の過程で油を使っているので、塩分のみならず、知らず知らずのうちに油を摂取しています。
しかも、「これではちょっと偏るので、かやくご飯や小丼などを追加する」などという方もいるかもしれませんが、これは炭水化物の「ばっかり食べ」で、血糖値が上がってランチの後の眠気を誘うことになりますし、栄養としても圧倒的にタンパク質が足りません。
そこで、こんなメニューに追加したいのは、めかぶ納豆卵です。
めかぶ納豆卵 1人分
材料
- めかぶ ・・・ 1パック
- 納豆 ・・・ 1パック
- 卵 ・・・ 1個(卵黄と卵白に分ける)
- 青のり
- 1 めかぶ、納豆をボウルに入れてよくかきまぜる
- 2 卵は割って、卵白を耐熱容器に入れてレンジにかけ(600wで約1分)、固まったらよくほぐす
- 3 器にめかぶ、納豆、卵黄を盛りつけ卵白と青のりをのせる
卵には動物性、納豆には植物性のタンパク質が含まれているので、これで2種類のタンパク質を同時に摂ることができます。これもコンビニでうどんを買う時に、一緒に海藻類、納豆も買ってくれば充分です。納豆やめかぶなど海藻類をめんつゆに入れていただくと、いつもと違う味になりますし、何と言っても喉ごしの良さはそのままですから、食欲がない時のタンパク質補給にもお勧めです。
秋以降に疲れを残さない、画期的な成分「シトルリン」
外でのランチでは、どうしても塩分を摂りすぎてしまうのですが、その対策として帰宅してからキュウリやスイカなどウリ科の食材やナスといった食材を摂りましょう。これらの食材には、塩分の排出を促すカリウム、シトルリンという成分が含まれます。特にシトルリンは、滋養強壮効果、いわゆるスタミナをつける効果や血流を良くする効果のある成分で、スイカやゴーヤなどは、きわの白い部分にこのシトルリンが豊富に含まれています。1930年に発見されていますが、その効果が解明された時には、「画期的な成分が見つかった」と栄養士の世界でも話題になりました。
外食メニューは、例えば丼ものの味つけにめんつゆを使ったり、サラダにドレッシングがかかっていたり、スープの素が使われていたりと、知らず知らずに塩分を摂ってしまうものが少なくありません。ですからできるなら、お店の方に「ドレッシングはかけないで」と頼んでみるのもいいかもしれません。
塩分の摂りすぎは、循環器系の疾患につながるのです。健康診断が怖い、などということのないように、毎日のランチにも気をつけたいものです。
普段、パスタランチや丼ものといったランチが多い方は、玄米や雑穀ご飯を提供しているお店にも行ってみるとか、今日は刺身定食にしてみるとか、いろいろなメニューを選ぶようにしましょう。「コンビニの玄米おにぎりを食べる」という日を作るのもいいと思います。
さて、次号は、「食欲の秋に食べ過ぎを防ぐ」ためにどうしたら良いか、ビジネスパーソンがオフィスでできる方法をご紹介します。
今日の“食べる”ヒント
・塩分排出、夏バテ防止にキュウリ、スイカを食べよう!
・調味料には想像以上に塩分が含まれると心しよう
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