具体的に、デザインのポイントを見てみよう。
全体のフォルムは、細い首から底に向かって丸く広がる安定感のある形で、
サイズは一緒に置かれるお皿や茶碗の空間からはみ出さない大きさに抑えられている。
胴回りの柔らかな曲線も親しみやすい。
素材は、当時主流だった陶器ではなく、新しい時代の開放感を演出する透明ガラスを採用。
もちろん、ガラスなので、しょうゆの残量も一目で分かる。
そしてキャップは、しょうゆの赤褐色とのコントラストが美しく、温かさが感じられる赤に。
しょうゆと赤いキャップの間にできる空白もきれいだ。
また、詰め替え口は2リットル瓶の口径より1mmほど広くし、注ぎやすくした。
榮久庵は、首の細さについて「首をもって注ぐ時、女性の手の大きさだと、小指が上がり、
美しい手のカタチになります。しょうゆを注ぐ時の手が非常にきれいに見えるんです」。
置いた時だけではない、道具として使う時も美しいこと、そこまで配慮したデザインだと言う。
ところで、卓上びん開発の目的だった液垂れ問題は、どのように解決されたのだろう。
やはり、ここが一番のネックで、注ぎ口の模型を100個以上作ってみたものの、
液垂れはなかなか解消しなかったと言う。が、ある日、注ぎ口の下側を切ってみた。
すると、しょうゆがすっと出て、しかも垂れない。
従来のしょうゆ差しは、急須の注ぎ口と同じで下が長い。
これと逆に、下側をカットして短くしたことによって、
液垂れのないキレの良い注ぎ口ができたのだ。
「キッコーマンしょうゆ卓上びん」は、その機能性とデザイン性が認められ、
93(平成5)年に「グッド・デザインマーク商品」に選定されている。 |