製品に細かな改良を加えたことも、クリネックスティシュー成功の要因にあげられるだろう。
発売翌年の65年には、早くも「クリネックスティシュー・エコノミーサイズ」(200組400枚、180円)を発売している。この商品は需要の拡大を背景に急激に販売量を伸ばし、翌年には年間販売ケース数でレギュラーサイズを抜いてしまうほど売れた。
71(昭和46)年には、取り出し口に現在では一般化している"ポリウィンド"を付けた製品を出荷。ティシューを取り出すときの不快な音が軽減され、箱の中に埃が入ることもなくなった。
これもまた、「消費者がどんな商品を求めているかを常に調査する」という、同社のマーケティングが生み出した改良点に他ならない。
需要が頭打ちとなった80年代以降、ティシューペーパー業界は低成長期に入った。市場価格は下がり続け、1ボックス90円前後にまで下落。
81(昭和56)年、クリネックスティシューはクオリティを重視した「ニュー・クリネックスティシュー」を発売し、競合する他社製品との差別化を図った。「安売り競争に与せず、高品質な製品を消費者に届ける」という発売当時からのポリシーは、激化する低価格競争の中でもしっかり守られたのである。
以降も、85(昭和60)年の5箱パック、97(平成9)年の5箱パックコンパクト、01(平成13)年の5箱パックスリムなど、クリネックスティシューは時代の消費者ニーズに合わせた商品を送り出してきた。02(平成14)年には、スリム化することによって犠牲になった品質を改善するため、再び紙厚を上げることまでしている。箱の高さは50mmから62mmになったが、ひとクラス上の柔らかさと上質感は、やはりクリネックスティシューならではのものだ。
クリネックスティシューの発売から今年で40年。ティシューペーパー市場は年間1100億円もの巨大市場に成長した。が、各メーカーのシェア争いによって価格競争はますます激化し、ともすれば品質が犠牲になってきた面は否定できない。そうした中でも、ブランドで勝負できる製品を作り続けてきたクリネックスティシューは、やはり特筆すべき存在といえるだろう。
長らく維持してきたトップシェアは80年代半ばに他社に奪われたが、クリネックスティシューのブランド・ロイヤリティーにはいささかの揺るぎもない。そう、パッケージの"波模様"が40年にわたって変わらなかったように。
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レギュラーに代わってメイン商品となった「クリネックスティシュー・エコノミーサイズ」。写真は67(昭和42)年にデザイン変更されたもの。同年、エコノミーとレギュラーの比率は9:1になった。 |
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97(平成9)年に発売された5箱パックコンパクト。持ち運び・収納の利便性を考えて開発されたパッケージで、多くのメーカーがほぼ同時にコンパクト化を図った。ロゴはアルファベット表記に変更された。 |
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01(平成13)年発売の5箱パックスリム。スリム化は21世紀に入っての大きなトレンドとなったが、紙を薄くせざるを得ないため、メーカーによっては品質が犠牲になるケースもあった。 |
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03(平成15)年発売の現行5箱パック。クリネックスティシューのブランドを守るため、再び品質をアップ。箱は大きくなったが、消費者の反応は良好だという。 |
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取材協力:株式会社クレシア(http://www.crecia.co.jp/index.html) |