日本人の食生活の変化や健康意識の変化に合わせ、数多くのリニューアルを繰り返してきたキューちゃん。東海漬物はその節目毎に新しいテレビCMやキャンペーンを導入し、需要を喚起してきた。
最初のテレビCMは発売翌年の1963(昭和38)年に放送。商品と同じ名前の人気歌手・坂本九を起用したこのCMにより、きゅうりのキューちゃんの名は全国に知られるようになった。
1977(昭和52)年にはキューちゃん10億袋突破を記念して「10億袋キャンペーン」を実施。この年はやや大きなサイズの「キューちゃんL」も発売している。
1989(平成元)年には俳優の風間トオルを起用したテレビCMをオンエア。同時に「消費者プレミアムキャンペーン」を実施し、さらなる売上増を果たした。
記憶に新しいのは、昨年まで3年間に渡って続けられた格闘家・角田信朗を起用したコミカルなテレビCMだろう。伊藤氏は、このCMはキューちゃんのブランドイメージを活性化させるためのものだったと言う。「2001年の9.11事件をきっかけに、ここ数年は暗い世相が続きました。あのCMは『みんな、もっと元気を出そうよ』というメッセージでもあったんです」
そして今年の2月から4月にかけてオンエアされたのが、日本を代表するサッカー選手・川口能活を起用した不思議な味わいの私小説風CM。最後のカットでパッケージが出てくるまで、これがキューちゃんのCMだとは分からないユニークな内容が話題になった。
「こちらはターゲットを正面から見据えた正攻法のCM。テーマは“本物”です。世の中もそろそろ安定してきたし、消費者ともう一度しっかりコミュニケーションを取ろうと考えて作りました。既に認知度100%と言っていいキューちゃんが“今”の商品であることを伝えるためには、コンセプトを真正面から伝えるアプローチが必要だったんです」
40年以上に渡ってきゅうりのキューちゃんがロングセラー商品であり続けた理由が、ここにある。
“今”の商品であり続けること。そのため、決して懐かしい商品にしないこと。
確かに、食卓でご飯の脇に添えられたキューちゃんを見ながら、「懐かしいなあ」と思う人はいないはずだ。
漬物嫌いの子供でも、キューちゃんだけは進んで食べるという声をよく聞く。彼らにとって漬物はもう昔の食べ物だが、キューちゃんだけは“今”の食べ物なのだろう。
伝統的な漬物。誕生して43年。味わいは不変。それでいながら、まったく古さを感じさせないきゅうりのキューちゃん。日本人の食卓にこれほどしっかりと根付いた漬物は、他にない。
取材協力:東海漬物株式会社(http://www.kyuchan.co.jp/) |