晴れて売り出された「ごきぶりホイホイ」。市場の反応はどうだったのだろう?
「これがもう、最初から爆発的な売れ行きでした。東京の支店にはひっきりなしに電話がかかってきて、営業マンが電話を取るのを嫌がったくらい。工場がある坂越でも、地元のスーパーが直接トラックを寄越して商品を持って行きました(笑)」。
想像を超える売れ行きだったという。同社のユーザーアンケートによると、「とにかくよく捕れる」「殺鼠剤では難しかったハツカネズミが捕れた」「蛇が入ってる!」などという、驚くべき声もあったらしい。
ここまで売れた背景には、当時のゴキブリ事情(?)がある。高度経済成長とともに住環境の改善が急速に進み、家屋の暖房化率が上昇。また集合住宅が増え、ゴキブリにとっては活動範囲が一挙に拡大した。どの家庭でも、必ずといっていいほどゴキブリには悩まされていたのである。
そこに登場した「ごきぶりホイホイ」。殺虫剤不要で簡単に使え、ゴキブリの姿を直視せず、箱ごとゴミ箱に捨てることができる。それでいて、値段は今までのゴキブリ捕獲器とほとんど変わらない。売れるのは当然だったとも言えるだろう。
この「ごきぶりホイホイ」の好調な売れ行きを更に後押ししたのが、積極的に展開したTVコマーシャルと雑誌広告だった。キャラクターには蚊取り線香「アース渦巻」でも使った由美かおるを起用。当時、絶大な人気を誇っていたタレントによる宣伝効果は、極めて大きかった。
初代製品発売後も、「ごきぶりホイホイ」は細かな改良を続けていく。
1978(昭和53)年、チューブタイプの粘着剤からシートタイプに変更を追加。94(平成6)年、ゴキブリの足についた油分・水分を取り除く足ふきマットを追加。96(平成8)年、キッチンにある食材を再現した4種類の強力誘因剤を採用。98(平成10)年、粘着シートに凸凹を付け、ゴキブリ捕獲効果を上げた「デコボコ粘着シート」を採用。同年、姉妹品「ちびっこホイホイ」発売。
そして2003(平成15)年、「ごきぶりホイホイ」発売30周年記念として「復刻版ごきぶりホイホイ」が発売された。トラップの形やチューブ入り誘因剤など、何から何まで昔のままという、昔懐かしい製品だ。
現在、殺虫・防虫業界におけるアース製薬のシェアは48%にもなる。もちろん、業界のトップメーカーだ。ゴキブリ用に限っていえば、そのシェアはさらに高くなるという。
ただ「ごきぶりホイホイ」の売れ行きは長らく横ばい状態が続いている。環境問題が声高に叫ばれる今だからこそ、殺虫剤を使わない「ごきぶりホイホイ」はもっと注目されていいような気がするのだが。
その点を西村さんに聞くと、こう答えてくれた。
「ゴキブリの数が少なくなったんでしょう。『ごきぶりホイホイ』が捕りすぎてしまったのかもしれませんね(笑)」。 |