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「ガリガリレインボー売場」のイメージ。商品の楽しさが伝わってくる。 |
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現行の「ガリガリ君」ソーダ3種類。1つのフレーバーに、わざわざ3種類のパッケージを作っている。 |
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「ガリガリ君リッチ」の夏商品はチョコチョコチョコチップ。 |
2000(平成12)年以降も「ガリガリ君」の快進撃は続く。マーケティング担当者が考えたのは、キャラクターを中心にさまざまな話題を提供し、アイス売り場に人を集めること。この原点になったのが、05(平成17)年に行った店頭テスト企画「ガリガリレインボー売場」だった。フレーバーが異なる7種類の「ガリガリ君」を虹のように並べて陳列した結果、今まで以上に親子層が興味を持ってくれたのである。
他にも、ゲームソフトのキャラクターとして「ガリガリ君」を登場させたり、小学生がよく読んでいる漫画雑誌で「ガリガリ君」の連載をスタートさせるなど、「ガリガリ君」が子供たちの話題になるような仕掛けを積極的に展開。玩具メーカーや文具メーカーと協業し、「ガリガリ君」アイテムを発売するようになったのもこの頃からだ。
さらに発売25周年にあたる2006(平成18)年には、「元気で、楽しく、くだらない」という「ガリガリ君」の世界観をより多方面に広げるため、あっと驚くような(時には脱力するような)プロモーションを立て続けに実施。ひとつの商品に3種類のパッケージを用意したり、必要もないスプーン入れを作って店頭に置いたり、はたまた部活気分のファンクラブ「ガリガリ部」を作ったりと、奇想天外なアイデアを次々と形にしていった。
こうした販促活動をスムーズに行うため、赤城乳業は子会社「ガリガリ君プロダクション」を設立。商品から生まれたキャラクター「ガリガリ君」は、独立してキャラクタービジネスを行えるまでに成長したのである。
口コミを意識的に活用するようになったのも2006(平成18)年から。需要が低下する冬に「ガリガリ君」の妹「ガリ子ちゃん」アイスと、小学生のブルジョア感を刺激する100円アイス「ガリガリ君リッチ」を発売。「ガリ子ちゃん」はネット上で萌え系論争を巻き起こし、おみくじを取り入れた「ガリガリ君リッチ」は「合格に効く」という口コミを誘発。共に市場の活性化につながった。この年の冬、「ガリガリ君」は例年の約2.5倍も販売本数を伸ばしている。
時には消費者からツッコミを入れられるような小ネタもあるが、あらゆる生活シーンに「ガリガリ君」の話題を投げ込むというプロモーション戦略は、確かな実績を残している。ここ数年、アイス市場はほぼ横ばいで推移しているが、昨年の「ガリガリ君」の販売本数は、なんと2億5500万本。日本人全員が1年に2本食べている計算だ。前代未聞の3億本達成も現実味を帯びてきた。「ガリガリ君」は、日本で一番数多く売れているアイスキャンディーなのである。
現在、「ガリガリ君」の中心購買層は子供ではなく、30〜40代の男性だという。小学生の頃に食べ始めたとすれば、世代的にはちょうどそのくらいになる。親子2代にわたる「ガリガリ君」ファンも珍しくない。
発売から28年という歴史は、ロングセラー商品としてはまだ若い部類に入る。だが、キャラクターが中心となった独自の世界観を、ここまで作り手と消費者が共有している商品はめったにない。その商品性はアイスキャンディーの枠組みをはるかに超えている。「ガリガリ君」の歴史は、まだ始まったばかりなのである。 |