ここ数年来のめざましい普及により、パソコンなどIT機器は特別なものでなくなり、当たり前の家財道具のように扱われるようになりました。若い世代から、中高年世代にまで広がりました。「保存」ということも、タンスに物をしまうのと同じ感覚で日常の営みとなりました。タンス、押入れ、本棚としまったのはいいけれど、いざ探すとなると「さあ、どこにしまったんだっけなあ」と右往左往することは、誰しもにある経験だと思います。パソコンのデータ探しも同様ですね。道具は変わっても人間の行動の性は変わらないようです。
特選句は結婚生活の倦怠期を迎えた夫婦の、「これが目に入らぬか!」と夫をねじ伏せている奥さんの光景が浮かんできます。「印籠」という表現によって、作品の面白さがとても膨らみました。
尚、多少の例外はありますが、基本的に「五七五」の形式に収めていただきたいと思います。せっかく面白いところをついているのに、その形式からかけ離れてしまったために、もったいない作品が結構あります。「五七五」の縛りによって、言葉を工夫する知恵も出てくると思います。
「本当に保存したいを保存せず」 立川談幸
|