IT川柳
お題は「カレンダー」
一月の特選
- 女子会と書き込む祖母の敬老会(甚六)
一月の名作・迷作選
- 日めくりとスマホタッチの二刀流(あぐみ)
- カレンダー毎年隠す壁の傷(しげのり)
- 何事もなかったように12月(だいちゃんZ!)
- 定年後曜日変わらぬカレンダー(つぼちゃん2)
- めくられず役目を終える大晦日(なかたろう)
- めっきりとカレンダー減る定年後(やじろべー)
- 定年の父が書き込むゴミ出し日(りょうちゃん)
- 恋したら暦に増えた丸印(汐海岬)
- カレンダー余生は裏で活かされる(十六夜)
- カレンダー財布の減りを覗いてる(陽香)




農耕民族の日本人にとって、暦は大変重要だったようです。暦には農作物を作る上での経験値や統計などが含まれており、"生きるための道しるべ"と言っても過言ではなかったのかもしれません。現代人にとって暦、いわゆるカレンダーは公私にわたるスケジュール管理に欠かせないもの。そこにパーソナルな記念日が加われば、愛着も芽生えてきます。12月から1月へわずか1枚の違いなのに、気持ちさえ改まってしまうのはカレンダーの不思議な力。暮れが近づくにつれてカレンダーが痩せてくることに切なさを感じ、1枚めくるだけで明るい未来の輝きが見えてくる…、年末年始はカレンダーに特別な思いを抱いてしまいます。
今やカレンダーも、スマートフォンやタブレット端末のアプリとして大いに活用される時代。自身の目で見て確認する紙のカレンダーと違い、予定を事前に知らせてうっかりをなくしてくれます。カレンダーにびっしりと書き込みのある、充実した日々を送る人のワクワク感。それに引き換え、定年後は「カレンダーの何と寂しいことよ」と、思わずため息が漏れるわびしさ。何だかカレンダーが生き物のように見えてきて、ICTが普及しても、暦には常に人間の心が投影されることにホッとさせられます。
特選句は、男たちの定年後の嘆きをよそに、年老いてなお前向きな女性(おばあちゃん)のほほ笑ましい姿が浮かんできました。女性のほうが平均寿命が長いのが分かるような気がします。
「黒文字もほんのり赤い日々がある」 立川談幸

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編集部より |