外貨建取引管理システムをERPで刷新
グローバルビジネスのさらなる拡大を支える
世界196の国と地域で高品質なICTサービスを展開するエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社様(以下、NTTコミュニケーションズ)。海外企業とのビジネスがますます増加する中、NTTコムウェアでは、同社の外貨建取引管理システム「GAIKA」を短期間で刷新し、グローバル事業基盤の強化に貢献した。システム刷新の背景や成果について、NTTコミュニケーションズ 財務部長の中村徹太郎氏と、同システム部 第三システム部門長の甲田博正氏にお話を伺った。
老朽化が進む外貨建取引管理システム「GAIKA」の刷新が急務に
今回のシステム刷新の背景をお聞かせください。
中村 徹太郎氏
NTTコミュニケーションズ株式会社
財務部長
当社では海外の通信事業者・ICTベンダーとの取引も多く、為替レート変動による差損益を適正に管理することが重要な業務の1つとなっています。そのため、NTTグループ共通の経理業務システムに加えて、独自の外貨建取引管理システム「GAIKA」を自社で構築し運用することで、外貨建ての債権・債務状況などを常に把握できる仕組みを整えてきました。
しかし、構築から約10年が経過したGAIKAは老朽化が進み、年々拡大するグローバル取引への対応が機能・性能の両面から困難になっていたのです。そこで、システムの抜本的な見直しを決断し、最適なソリューションと開発パートナーの選定に着手しました。
GAIKAが稼働するサーバーのOSサポート期限が間近に迫っていたため、新システムはそのサポートが終了する前に立ち上げる必要がありました。また、システムの開発に当たっては常に「コスト削減」が求められますから、今回も、むやみに工数を増やして余分な費用をかけることを避けなければなりませんでした。つまり「素早く・簡単に」構築できることを条件として、ベンダー数社に提案を依頼したのです。
NTTコムウェアをパートナーに選んだ理由をお聞かせください。
甲田 博正氏
NTTコミュニケーションズ株式会社
システム部 第三システム部門長
私たちの要望に対するNTTコムウェアからの提案は、新たなGAIKAのベースとして純国産ERPパッケージ「GRANDIT」を用いるというものでした。GRANDITのベストプラクティスによる多彩な機能を活用することで、業務プロセスの標準化が可能となる上、開発期間・コストも大幅に抑制できます。その一方で、関連する周辺システムとの連携や固有の業務ニーズに対しては、NTTコムウェアの開発力を生かした緻密なフィッティングを実施。単にパッケージに合わせるのではなく、より私たちのニーズに即したシステムを迅速に構築する――という提案でした。
GRANDITは、充実した帳票類など外貨建取引管理に必要な基本機能を備えており、GAIKAのベースとして好適でした。NTTコムウェアは、多くの会計系システムを扱ってきた実績があるほか、現場業務に関する知識も豊富なので、安心して開発を任せられると判断しました。
綿密な意見交換で現場業務とパッケージ機能をフィッティング
本開発プロジェクトにおけるNTTコムウェアの取り組み方はいかがでしたか。
開発プロジェクトの開始は2013年7月。新システムは2014年3月までに完成する必要がありました。その短期間で、実際の業務とパッケージ機能のフィッティングを効率よく確実に行うため、NTTコムウェアの提案により「JADセッション」と呼ばれる方式を採用しました。これは、仕様の検討段階で開発者とユーザーが画面を一緒に見ながら要件を確認していく方式で、意識の齟齬が生じにくく、現場のニーズをより柔軟に取り込むことが可能です。また開発のアジリティも高まるため、当社の全社的ミッションであるスピード経営にも貢献できるなど、非常にメリットの多いやり方でした。
ほかにもNTTコムウェアは、福岡県・博多に特設プロジェクトルームを設け、大勢のスタッフで開発に当たるなど、さまざまな方策を駆使しながら、限られた時間の中でプロジェクトを完遂してくれました。全国規模のネットワークと、それをコントロールする高度なマネジメント力は、大変頼もしく感じましたね。
こうして、予定の期間内で無事に構築されたGAIKAは、当社のエンタープライズ向けクラウドサービス「Bizホスティング Enterprise Cloud」上で稼動を開始。現在も日々の外貨建取引管理業務に利用しています。
今回のシステム構築プロジェクト概要
GAIKAを刷新した成果や、今後の展開などについてお聞かせください。
パッケージの機能と業務プロセスのフィッティングにより、当初の目的だった業務プロセス標準化もうまく実現されています。例えば、従来は決算期ごとに外貨を時価に換算する「評価替処理」を各事業部が個別に行っていましたが、現在は財務部門で一括処理できるようになりました。支払消込プロセスを自動化により大幅に短縮するとともに、データ接続機能を活用して当社フロントシステムとの連携も効率化されました。その結果、現場の作業工数が約3割削減されるなど、生産性が大きく向上しています。
現在の海外取引件数は年間数万件で、これは日増しに増加しています。今後もグローバル化が加速することを考えれば、今回のシステム刷新の効果はさらに高まっていくものと思います。
また、今回のGAIKA構築で培った経験は、今後、当社の顧客向けソリューションにも生かしていきたいと考えています。グローバル競争を戦う上で、日本企業の経理・財務業務におけるICT活用は、まだ取り組みが遅れがちだと感じます。私たちはその分野で先陣を切って挑戦し続け、成果をお客さまにフィードバックしていきたい。NTTコムウェアには引き続き、支援を期待しています。
谷口 篠子
NTTコムウェア株式会社
エンタープライズビジネス事業本部
第五ビジネス部 開発部門
スペシャリスト
お客さまニーズを柔軟に取り入れながら
迅速かつ安価に新システムを構築
提案に当たり、スクラッチ開発では時間も費用もかかることに加え、お客さまのご要望である業務プロセスの標準化という点からも、パッケージの活用が適切であると考えました。いくつかのパッケージを検討した結果、比較的安価で、標準機能で外貨建取引に対応している「GRANDIT」を選定しました。
山崎 涼子
NTTコムウェア株式会社
エンタープライズビジネス事業本部
第五ビジネス部 営業部門
スペシャリスト
パッケージの機能と実際の業務のフィッティングを高めるために採用した「JADセッション」には、システムのエンドユーザーであるNTTコミュニケーションズ様の現場ご担当者にも加わっていただきました。同じ画面を見ながら密な意見交換を実施し、その過程で、クリティカルな課題を早期に発見、ユーザーとともに解決策を検討するといった、従来のやり方にとらわれない対応により、柔軟な発想が生まれ、お客さまニーズに合ったシステムを効率よく構築することができました。そうしてお客さまとともに作り上げたGAIKAは、稼動開始後に現場から「使い方が分からない」といったお問い合わせをいただくこともなく、以後半年余り、順調にお使いいただいています。
NTTコミュニケーションズ様がグローバルビジネスを強化していくために必要不可欠なのが、GAIKAというシステムです。今回は、そのGAIKAを刷新すると同時に、NTTグループ共通の経理業務システムとシームレスに連携させることで、グループ経営の高度化にも貢献することができました。しかも、パッケージを有効活用してスピーディーかつ安価にそれを実現した点に、今回のプロジェクトの大きな意義があると考えています。
他の企業でも、中核を担う基幹システムと連携させながら周辺システムを構築するケースは多々あります。その際、質の高いシステムを短期間かつ低コストで構築するには、今回のような「周辺システムにもERPパッケージを活用する」方式が有力な選択肢となり得るのではないでしょうか。
そこでキーになるのは、GAIKA構築でも行った企業ニーズとERPパッケージとの的確・柔軟なフィッティングです。NTTコムウェアは、そうした技術・ノウハウを豊富に備えたSIerとして、今後もさまざまなお客さまの経営戦略の実現をシステム面からサポートしていきたいと願っています。
2014/12/02
- ※GRANDIT、GRANDITのロゴは、GRANDIT株式会社の登録商標です。
- ※文中の社名、商品名などは各社の商標または登録商標である場合があります。
お客さまプロフィール
- 名称
- :
- NTTコミュニケーションズ株式会社
- 所在地
- :
- 東京都千代田区内幸町1-1-6
- 営業開始日
- :
- 1999年7月1日
- 事業内容
- :
- “Global ICT Partner”の企業スローガンの下、法人/個人向けの多彩なICTサービスdd開。世界196の国と地域でネットワークサービスやクラウド事業を展開するなど、グローバル化にも積極的に取り組んでいる
- 公式サイト
- :
- NTTコミュニケーションズ
導入前の課題
加速するグルーバルビジネスに対応するため、コストを抑えながら、老朽化したシステムを刷新したかった。
導入効果
パッケージの活用で迅速かつ安価に新システムを構築、組織ごとの業務処理を標準化し、現場の作業工数を約3割削減した。