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自分と対話して、自分を試し、引き出しを増やす

― アスリートの方は、しばしば自分と対話するという表現をされます。

はい。自分と向き合うことで、食事にしても肉体改造にしても「こうやったらどうなるだろう?」とトライアンドエラーを繰り返しました。そうやって自分と対話して、自分を試していくと、引き出しを増やしていくことができます。そうすれば、いざ、という時の対応力も上がっていきます。

コンプリートプレーヤー(完璧な選手)などいないと思いますが、そこにどれだけ近づけるか、未知の世界ですが、進化し続けることの面白さが実感できるようになってきましたね。

― とすると、大きな人生の変化である引退も、不安はありませんでしたか?

選手としては完璧なタイミングで引退できたと思います。肉体的にも気力的にも、もうできないと感じましたが、それも、自分と向き合っていたからこそ分かったことだと、今振り返っても思います。もし、実際の引退よりも前のタイミングだったら、もうちょっとできたかも、と悔いが残ったかもしれませんし、これを越して続けていたら、ボロボロになっていたでしょう。

― ビジネスパーソンでも、大きなプロジェクトを終えたり、転勤になったり、仕事のステージが変わると、ぽっかりと穴が開いたような寂しさがありますね。

杉山愛さん

私の場合、ありがたいことに、すぐにメディアに呼んでいただいてテニスの紹介をしたり、現役人生を振り返ったりというお声掛けをいただきました。ですが、自分から発信していることが何もないという現状に違和感を覚えるようにもなっていました。自分らしさがないなという思いや、この先どうなるのだろうという不安、本当にやりたいことをやりたいという欲求など、いろいろな感情が起こってきたのです。充実しておらず、満たされず、時間だけが埋まっているようでした。

― それがウィッシュリストにつながるのですか?

そうなのです。これはいけないと思って、とにかく今、自分がやりたいことをウイッシュリストとして書き出してみよう。どうせなら、たくさん書いてみようと100ほど出してみました。「○○が食べたい」とか「富士山に登りたい」といったことから、「子どもが欲しい」というビッグなライフイベントまでジャンルも規模もさまざまでした。そうして書き出していく作業が、自分と向き合う時間になります。すると自分が進みたい方向性も見えてくる。そうすると自分の行動も変わってくるように思います。自分を整理するツールとして、意外に面白いなと思って、皆さんにお勧めしています。

私の場合は、45歳まではプライベートを優先すると決めました。これも自分と向き合っての、決断です。その後は社会に恩返しをするとか、第二の天職を見つけるなど考えているところです。

― スランプとその後の復活もそうでしたが、杉山さんがプロのテニスプレイヤーとして得たのは、自分と向き合うことの大切さでしょうか。

そうですね。私たちは、自分と向き合っているようで、実は向き合っていない。とすると問題は解決しないと分かりました。それを自覚して、何を目指すのかを見極め、それを着実に実行することが大切なのだろうと思います。

取材後記

ある程度の成果を出していたと思ったのに、ちょっとしたきっかけで不調を招き、あれよあれよという間にその大きな波にのまれてしまう…。仕事をしていて、そんなことはたくさんある。最初のつまずきを見ないふりしてしまうが、それが、大きな問題につながることはしばしばある。あるいはどん底に落ちても、そこからさらに飛躍することができたのは、失敗から学べたということだ。そして自分に向き合うというスタンスは、働くことそのものへの教訓となる。大きな仕事を成し遂げた杉山さんのお話に「私もがんばろう!」と勇気づけられた。

プロフィール

杉山愛(すぎやま・あい)
1975年神奈川県生まれ。15歳で日本人初のジュニア世界ランキング1位に輝いた後、34歳で引退するまでに、女子テニス協会(Women's Tennis Association、WTA)での自己最高ランキングはシングルス8位、ダブルス1位という素晴らしい成績を残した。2009年に現役を引退。現在は指導者、解説者として活躍している。著書に『杉山愛の“ウィッシュリスト100” 願いを叶える、笑顔になる方法』(講談社)など。

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