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TOPソリューション・プロダクトコラム仕事での生成AIの利用実態。「効率化」だけでは見えない企業導入の効果。
2026.09.08

仕事での生成AIの利用実態。「効率化」だけでは見えない企業導入の効果。

生成AIを仕事に取り入れる企業が増えています。

文章の作成や要約、情報収集など、これまで人が時間をかけていた仕事を短時間で処理できることから、「生成AIを導入すれば、生産性を高められるのでは」と期待している企業も多いのではないでしょうか。

以前のコラムでは、生成AIのガイドラインについて考えました。では、実際に使うとしたら、生成AIを仕事にどう取り入れればよいのでしょうか。

今回は、生成AIによって仕事がどう変わるのか、実際の調査や研究結果を見ながら考えてみたいと思います。

01 生成AIを導入すると、本当に生産性は上がる?

生成AIを導入する目的として、まず期待されるのが「生産性の向上」ではないでしょうか。

実際、MITの研究では、453人の専門職に文章作成の課題を行ってもらったところ、ChatGPTを利用した人は作業時間が平均40%短くなり、成果物の品質も18%向上しました。¹

実際の職場でも効果は確認されています。5,172人のカスタマーサポート担当者を対象にした研究では、生成AIの利用によって生産性が平均約15%向上しました。ただし、効果が特に大きかったのは経験の浅い担当者で、経験豊富な人では小さい傾向がありました。²

さらにBCGのコンサルタント758人を対象にした実験では、AIが得意な課題では仕事の速度や品質が向上した一方、AIが不得意な課題では、AIを使った人のほうが正答率が低下する結果も出ています。³

こうして見ると、生成AIで生産性が上がること自体には、かなり期待が持てそうです。ただし、「導入すれば、誰でも、どんな仕事でも同じように生産性が上がる」というほど単純ではありません。

ここで難しいのが、会社としてAIを導入するかどうかを判断するときです。業務時間を何%削減できるのか、費用に見合う効果があるのか。従来のIT投資と同じように「どれだけ時間や作業を減らせるか」という効率化だけで測ろうとすると、人や仕事によって効果が違う生成AIは、かえって判断しにくい存在にもなります。

MIT、カスタマーサポート、BCGの研究結果から、生成AIの効果が人や仕事によって異なることを示した図

では、仕事によって効果が違うのはなぜなのでしょうか。まず、生成AIがそもそも何を得意としているのかを見てみましょう。

02 生成AIは、何が得意なのか?

「生成AI」という名前から、AIに文章や画像、動画などを「作ってもらう」ことを最初に思い浮かべる人もいるかもしれません。

しかし、実際の職場での使われ方を見ると、もう少し幅があります。

OECDが日本の労働市場におけるAI利用をまとめた2025年のレポートでは、職場での生成AIの主な用途として、文書・文章の作成、データの整理・分析、文章の修正・編集・要約、翻訳、コーディング、アイデアの検討・改善などが挙げられています。⁴

Microsoft Researchが約20万件のCopilotでのやり取りを分析した研究でも、仕事でAIに求められていた活動の中心は、情報収集と文章作成でした。⁵

OECDの調査をもとに、文書作成やデータ分析、要約、翻訳、コーディングなど仕事での生成AIの主な用途を示した図

考えてみれば、現在の生成AIの中心にあるLLMは「Large Language Model(大規模言語モデル)」です。何かを作るだけではなく、大量の言語情報を扱えることも大きな特徴です。

会社の仕事を見回してみると、そこには大量の「言葉」と「情報」があります。私たちは日々、メールや報告書、議事録、技術資料、顧客の声、海外の文献などを読み、探し、整理し、比較し、判断しながら仕事をしています。

だとすれば、生成AIの使い道を考えるときに、「AIに何を作らせよう?」ではなく、「自分は仕事でどんな情報を扱っているだろう?」と考えてみるのも一つの方法です。

実際、先ほどのOECDの調査では、仕事で生成AIを利用していない人の21.6%が「どう使えばいいか思いつかない」と回答しています。⁴

まずは、自分が普段行っている「読む」「調べる」「整理する」「比較する」といった仕事から、AIを使えるところを探してみる。そこから意外な使い道が見つかるかもしれません。

大規模言語モデルの特徴から、読む、調べる、整理する、比較するといった仕事での生成AIの使い道を示した図

では、自分の仕事の中からAIを使えるところを見つければ、それで「使いこなしている」と言えるのでしょうか。

03 生成AIを「使いこなす」とは、どういうこと?

先日、社内エンジニアの働く環境を改善している、NTTドコモビジネス社員のオンラインセミナーを視聴する機会がありました。そこで興味深かったのが、コード作成に生成AIを活用する中で見えてきた、生成AIを高頻度で利用している人と、あまり利用していない人の違いです。

高頻度で利用し、コード作成を効率化できた人は、試行錯誤を重ねながら、自分なりの使い方を見つけていました。一方、利用頻度の低い人には、「どう使えばいいかわからないから使わなかった」という傾向が見られたそうです。

では、たくさん使えば「使いこなせる」ようになるのでしょうか。

第1章で紹介したBCGの実験からも分かるように、AIには得意な仕事と不得意な仕事があります。³ 出力された内容が正しいとは限らないため、人が結果を評価し、必要に応じて指示を変えることが必要となります。

そう考えると、AIを使いこなすとは、プロンプトのテクニックをたくさん知っている、多数のAIツールを用途別に使い分ける、ということではなく、自分が何をしたいのかを理解し、仕事のどこでAIを使うかを考え、適切に依頼し、返ってきた結果を評価しながら調整するということではないでしょうか。

これは、仕事で誰かに指示や依頼をするときとよく似ています。目的や要件を整理して伝える。返ってきたものを確認する。意図と違えばフィードバックする。ベンダーへ仕事を依頼するときにも必要な能力でしょう。

目的を明確にしてAIに依頼し、結果を確認、評価・調整して再び依頼する生成AI活用のサイクルを示した図

AIの時代だからといって、まったく新しい能力だけが必要になるわけではありません。これまで仕事で身につけてきた能力の延長線上に、「AIを使いこなす」ための力もあるのではないでしょうか。

04 生成AIの効果は、「効率化」だけなのか?

では、そうした使い方によって、会社にはどんな価値が生まれるのでしょうか。

もちろん一つは、第1章で見た効率化です。しかし、生成AIの効果は「今までやっていた仕事を速くする」ことだけではなく、さらに別の効果があります。

P&Gの専門職776人を対象にした実験では、AIを利用した個人が、AIを利用しない2人チームと同程度の成果を出しました。さらに、R&D担当者は技術寄り、営業・マーケティング担当者は商業寄りになりやすかった提案が、AIを利用すると、それぞれの専門領域を越えてよりバランスの取れたものになりました。⁶

つまり、AIによって一人の社員が扱える仕事の範囲を広げられる可能性があります。

さらに興味深いのは、AIを使うことで、人自身が学習する可能性です。

5,172人のカスタマーサポート担当者を対象にした先ほどの研究では、経験の浅い担当者ほどAIの恩恵が大きく、経験を積むスピードも速まりました。²

また、学生1,174人を対象とした2026年の研究では、AIを利用した後にAIなしで課題に取り組んでも、一部の参加者には効果が残りました。特に成果が高かったのは、AIを積極的に利用しながら、本人自身も課題に取り組んでいた人でした。⁷

P&G、カスタマーサポート、生成AI利用と学習効果の研究から、AIによる能力の補完や形成の可能性を示した図

AIに仕事を任せれば、それだけで人が成長するわけではありません。むしろ、自分でも考えながらAIを使うことで、これまで一人では難しかった仕事に取り組み、その過程で知識や経験を増やせる可能性がある、と考えたほうがよさそうです。

こうした結果を見ると、生成AIの効果を「何時間削減できたか」だけで測るのは、少しもったいないように思えます。今までの仕事を速くする「効率化」に加えて、今まで難しかった仕事を可能にする「能力の補完」、さらに仕事をしながら人自身が学ぶ「能力の形成」という見方もできるからです。

会社にとって、人材は大切な資産です。生成AIを人の仕事を置き換えるためだけのものではなく、今いる人材のできることを増やし、育成を補うものとして捉える。そこにもAIを導入する価値があるのではないでしょうか。

生成AIの効果を、仕事を速くする効率化、難しい仕事を可能にする能力の補完、人自身が学ぶ能力の形成の3つに整理した図

05 生成AIを活用するために、会社は何をすべきか?

では、こうしたAIの価値を会社の中で生み出すには、何をすればよいのでしょうか。

生成AIには、これまでのDXとは少し違うところがあります。DXでは、会社が業務上の課題を見つけ、業務プロセスを見直し、そこへシステムを導入するといった、組織側からの取り組みが重要でした。

一方、生成AIは、一人ひとりが自分の仕事から使い始めることができます。

66社・7,137人を対象にした生成AIの実証研究では、AIを継続的に利用した社員に、メールに使う時間が週に約2時間減少する変化が確認されました。一方、会議時間など、他の人との調整が必要な仕事には明確な変化が確認されませんでした。⁸

一人で変えられる仕事は、AIを使って自分で変えられる。しかし、会社全体の仕事の仕方まで、一人で変えることはできません。

だから、会社がAIの使い道をすべて決めるのではなく、社員一人ひとりが自分の仕事で試行錯誤し、役立つ使い方を見つけられるようにする。そのための環境を会社が整える、という考え方が必要になります。

会社がAIを利用できる環境、利用ルール、情報管理やセキュリティを整え、その中で社員が生成AIを活用する考え方を示した図

ここで気になるのが、日本企業の環境整備です。OECDの調査では、生成AIを利用している中小企業のうち、従業員向けのガイドラインを整備している割合は、ドイツの45.4%に対して日本は5.3%でした。⁹ 日本はAIの利用率そのものも国際的に低く、両者の因果関係をこの調査だけで断定することはできませんが、個人の使い方だけでなく、会社側の利用環境にも課題があることがうかがえます。

社員に「自由にAIを使ってください」と任せるだけでは、情報漏えいや著作権、利用するサービスの選定など、以前のコラムで取り上げた「使うリスク」が問題になります。一方、ルールを厳しくしすぎれば、試行錯誤する機会そのものを失い、「使わないリスク」につながります。

個人が安心して試行錯誤できる環境を、会社がどう用意するか。

生成AIの導入というと、新しいAIサービスを契約したり、特定の業務を自動化したりすることを思い浮かべがちです。しかし、社員一人ひとりがAIを使って自分のできることを広げられるように、利用ルール、情報管理、アカウント、アクセス権限、セキュリティなどの環境を整えることも、会社にとっての「AI導入」なのではないでしょうか。

AI導入のガイドラインについて、以前のコラムで詳しくご紹介しています。

生成AIを業務で活用したいものの、「どこから環境を整えればよいかわからない」「安全に利用するための仕組みを考えたい」といった場合は、ぜひドコモソリューションズにご相談ください。

参考文献

1.MIT・文章作成実験(453人)
Noy, S. & Zhang, W., “Experimental Evidence on the Productivity Effects of Generative Artificial Intelligence,” Science, 2023.
https://doi.org/10.1126/science.adh2586

2.カスタマーサポート調査(5,172人)
Brynjolfsson, E., Li, D. & Raymond, L. R., “Generative AI at Work,” The Quarterly Journal of Economics, 2025.
https://doi.org/10.1093/qje/qjae044

3.BCG・コンサルタント実験(758人)
Dell’Acqua, F. et al., “Navigating the Jagged Technological Frontier,” Organization Science, 2026.
https://doi.org/10.1287/orsc.2025.21838

4.OECD・日本の職場におけるAI利用調査
OECD, Artificial Intelligence and the Labour Market in Japan, 2025.
https://doi.org/10.1787/b825563e-en

5.Microsoft Research・Copilot約20万件分析
Tomlinson, K. et al., “Working with AI: Measuring the Occupational Implications of Generative AI,” Microsoft Research, 2025.
https://www.microsoft.com/en-us/research/publication/working-with-ai-measuring-the-occupational-implications-of-generative-ai/

6.P&G・専門職実験(776人)
Dell’Acqua, F. et al., “The Cybernetic Teammate: A Field Experiment on Generative AI and Teamwork,” Organization Science, 2026.
https://doi.org/10.1287/orsc.2025.20702

7.生成AI利用と学習効果の実験(1,174人)
Cruces, G. et al., “Does Generative AI Narrow Education-Based Productivity Gaps? Evidence from a Randomized Experiment,” NBER Working Paper 34851, 2026.
https://www.nber.org/papers/w34851

8.66社・7,137人の生成AI導入実験
Dillon, E. W. et al., “Shifting Work Patterns with Generative AI,” NBER Working Paper 33795, 2025.
https://www.nber.org/papers/w33795

9.OECD・中小企業の生成AI利用とガイドライン整備
OECD, “Maximising the benefits of AI while ensuring the safety and trustworthiness of AI technologies in the workplace,” Artificial Intelligence and the Labour Market in Japan, 2025.
https://www.oecd.org/en/publications/artificial-intelligence-and-the-labour-market-in-japan_b825563e-en/full-report/maximising-the-benefits-of-ai-while-ensuring-the-safety-and-trustworthiness-of-ai-technologies-in-the-workplace_bdc1b79d.html

商標について

※Microsoft、Copilotは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国々における登録商標または商標です。

※ChatGPTは、米国OpenAI OpCo, LLCの米国およびその他の国々における登録商標または商標です。