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ゲストインタビュー 有限責任監査法人トーマツ シニアマネジャー 中澤可武氏
ゲストインタビュー 有限責任監査法人トーマツ シニアマネジャー 中澤可武氏

外務省が在外公館などを通じて実施した「海外進出日系企業実態調査」によると、2017年10月1日時点で海外に進出している日系企業の拠点数は7万5531と過去最高を記録しました。国内市場のこれ以上の拡大が期待しにくい以上、海外に市場を求める企業は今後もさらに増えるはずです。しかし、企業の海外進出には必ず特有のリスクがつきまといます。グローバル化に伴うリスクとどう向き合い、どのように対処すべきなのか。リスク管理の専門家である有限責任監査法人トーマツの中澤可武様に伺いました。(本文中敬称略)

海外進出を急ぐあまり、リスク対策がおろそかに

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中澤 可武(なかざわ・かむ)氏
有限責任監査法人トーマツ リスクアドバイザリー事業本部 シニアマネジャー。グローバル企業の戦略リスクおよびカントリーリスクのマネジメント体制構築、グローバルBCP(事業継続計画)策定、サプライチェーンの可視化、国内外拠点の経営者向け経営管理ガイドライン策定などの豊富な支援実績をもつ。

―ご自身の経歴、ご専門についてお聞かせください。

中澤:私は、国会議員の政策担当秘書を数年勤めた後、コンサルティングの世界に入りました。政策担当秘書とコンサルタントは仕事としての領域が異なるとはいえ、何らかの問題を解決していくという共通点があり、前職の経験もコンサルティングに生かされているように感じています。現在は、トーマツ内のストラテジックリスクというチームでガバナンスや戦略リスク、カントリーリスク、BCPを含めた危機管理を担当しています。

―日本企業のグローバル展開の傾向、現状について教えてください。

中澤:日系企業のグローバル展開といえば、以前は売り上げや収益を伸ばすことを、最大にして唯一の目的に掲げている企業が多い印象でした。しかし、海外進出する企業が増えるとともに、それに伴うリスクに対する認識も徐々に広まり、今ではリスクマネジメントやガバナンスの体制整備を重視する傾向が強まってきています。

とはいえ、グローバル展開する際にはスピードが重視されますので、十分なリスク評価を行わないまま海外に打って出る企業も珍しくありません。進出の足掛かりとして、M&Aによる現地企業の子会社化などを行いますが、リスク評価が甘いと「思ったより収益が上がらない」「不正会計が発覚する」といった事態に陥ることもあります。

「攻め」と「守り」で異なるアプローチ

―グローバル展開に伴うリスクマネジメントには、どのように取り組めばよいのでしょうか?

中澤:大きく分けると、「守り」と「攻め」の2種類のアプローチがあると考えています。この両面からリスクマネジメントを考えなくてはいけません。

守りのリスクマネジメントとは、例えば贈収賄や不正会計、各種法令違反などが発生したとき、それに伴う損失を最小化し、企業の価値を守るための対応を講じることです。

攻めのリスクマネジメントは、自社の戦略を実現するうえで妨げとなりそうなリスクをうまく管理し、価値を生み出そうという試みです。例えば、「将来、進出先の市場環境が変わったとき、戦略が実現できるのかどうか」「そのための人材をいかに確保していくのか」といったリスクを認識し、それに備えて利益に結び付ける取り組みです。

図1:リスクマネジメントにおける「攻め」と「守り」

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【 図版制作/コンテンツブレイン 】

世界には、日本とはまったく異なるリスクが存在

―国内と海外では、リスクマネジメントのあり方も異なるのでしょうか。

中澤:リスクについてもガバナンスについても、日本では共通の文化・価値観があります。分かりやすい例が災害対策です。日本では地震や水害のリスクは、専門家でなくても理解していて、対策についても共通の認識を持っています。ところが、海外では、自然災害が多い国でも、災害に伴うリスクの軽減に注力できていないことが多いですね。

そもそも海外ではリスク管理の専門家を置いていない企業も少なくありません。まずリスクの存在を認識してもらうことからスタートしなければならない分、マネジメント体制の構築に時間がかかります。

―国によって発生しやすいリスクに違いはありますか?

中澤:アメリカやヨーロッパ諸国は法令の解釈が比較的明確で、それに伴って業務が行われているので、法令違反のリスクは少ないといえます。そのため守りのリスクマネジメントに力を注ぐ必要は、それほどないでしょう。

意識しておきたいのは、昨今のアメリカでは、制裁関税、税制改革などの新たな政策が唐突に打ち出されることがたびたび起こっていること。なかには自社に不利益な政策が出てくるかもしれません。

予想外の事態が起こったときに、どう乗り切るか。その意味では攻めのリスクマネジメントがより重要になっています。

一方、東南アジアや中国の場合は守りのリスクマネジメントが重要で、法令の解釈にあいまいさがあったり、いわゆるファシリテーションペイメントのような、「法令では禁止されているにもかかわらず、実際には横行している」という、実務上のグレーゾーンが多かったりします。

現在の日系企業は、海外子会社に対してもグレーゾーンは容認しない方針のところが多いですが、その種のリスクをどう扱うかという守りのリスクマネジメントは、企業としての姿勢が問われる、非常に難しい問題ですね。

仕事に対する従業員の姿勢も、日本とは大きく異なります。アジアなどでは、他社から待遇が良い条件を提示されるとすぐに転職してしまう傾向があります。日本であれば後任に引き継ぐために、辞表を出してから一定期間は現在の仕事を継続しますが、すぐ新しい会社に行ってしまうことも珍しくはありません。「決められた期間は今の仕事を続けてもらう規則があるから、まだ新しい会社に行かないで」と引き留めても、気にしないようです。

また国内にいては想像できないようなことも目にします。ある国では、企業の機密情報を投稿するとポイントが獲得できるといったサービスを提供しているWebサイトがあります。会社の機密をお金に換えられる仕組みが公然と存在しているわけですね。海外子会社の社員が、犯罪に手を染めているという意識もなく、気軽に「ポイントがもらえる」と思いアップロードしてしまうかもしれない……、グローバル進出には、そうした世界も待ち受けていると認識しておいたほうがよいでしょう。

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