

人口減少、高齢化、大規模災害、過疎化など、都市や地域の抱えるさまざまな課題を解決し、持続可能な社会を実現するスマートシティが注目されている。第39回IT戦略総合大会ITソリューションセッションにおいて、民間街区型スマートシティの実現を支援する「GreenUs®(グリナス)」のソリューションプロデューサーとして事業を推進するNTTコムウェアの芝田 豊綱が講演した。
スマートシティを実現していく上での課題
総務省情報通信白書によると、現在、グリーン・カーボンニュートラルやSDGsの達成、災害の激甚化への対応、ウェルビーイングなどグローバルな課題がありますが、日本では特に人口減少・高齢化の進行、生産性向上などの課題が注視されると言われています。スマートシティではそれらの課題に対応すべく、効率的な交通・モビリティ、防災、インフラ維持管理を始め、多様な観点からのアプローチを試みています。
スマートシティには、自治体などが主導する行政主導型と、複数企業が協議会などの体制を作り特定地区の機能をアップデートすることで価値を高める民間街区型(エリアマネジメント型)がありますが、どちらも事業として見ると“成果”が見えづらい・少ない、ランニングコストに問題があるといった課題が指摘されています。
GreenUsのビジネスモデル
こうした状況のなか、NTTコムウェアは2022年10月にサステナブルスマートシティソリューション「GreenUs®(グリナス)」の提供を開始しました。
GreenUsは、NTTコムウェアが長年培ってきたビル・エリアマネジメントやワークスタイル変革の実績、データマネジメントやAI実装のノウハウを結集して、SDGsやESGなどの社会課題の解決につながる変革をめざし、人々の豊かな生活を支える“スマートシティの実現”をサポートするソリューションです。

現在、GreenUsは民間街区型(エリアマネジメント型)のスマートシティを主なターゲットとし、来街者(街区に訪れる人・働く人や企業)向けにデジタルを活用したサービスを提供しています。しかし、運営コストの面からみると、来街者向けサービスの収益のみでスマートシティソリューションを提供し続けることは難しいため、人々の行動から得られたデータを利活用して、街区開発・運営者向けに新たなサービスを提供し、その収益によって持続可能な循環型スマートシティの実現をめざしています。
GreenUsが「来街者」「街区開発・運営者」に提供する価値
サービス提供において大切なのは、来街者の日々の行動に寄り添い、自然にデータを利活用していただけることだと考えています。
GreenUsには来街者、街区開発・運営者の双方に価値を提供する役割を備えており、来街者(図の上段)に向けてはワークインライフの充実、働きがい創出、サステナブル意識の向上と行動変容という価値を提供します。
そして、そこで得られたデータを利活用して、街区開発・運営者(図の下段)に向けて、脱炭素/環境配慮・食品ロス削減、収益向上、ビル・街区運営の省人化・コスト削減に貢献します。

GreenUsのプロダクトラインナップ
これらの価値を提供するためのプロダクトのラインナップは、1)来街者向けサービス群、2)街区開発・運営者向けサービス群、3)データプラットフォーム(都市OS)の3つに分けられます。これから一つひとつ紹介します。

1)来街者向けサービス群
街区で仕事をする際に利便性を高める「ワーカーポータル」と、街区を生活者としてもっと活用したいワーカー向けの「ライフポータル」というアプリを通して、各種サービスへのアクセスを容易にします。

アプリで提供されるサービスの代表的なものは次のようになります。
a.オフィスワーカー向けサービス
・デジタルオフィスホテリング
フリーアドレスのオフィスにおいて、仕事内容にマッチした席やファシリティの予約が出社前にできます。管理面ではオフィスレイアウト、ファシリティの活用率の確認や考え方の検討に利用できます。
・デジタルオフィスコンシェルジュ
オフィスにいるワーカーの位置情報がすぐにわかるのでコミュケーションがとりやすくなります。オフィスにいないワーカーについても状況を把握し、相手の状況にあわせた連絡手段でコミュニケーションをとることか可能です。人の動きをレポーティングすることで組織や個人の働き方改善に寄与します。
・デジタルコミュニティマネージャ
ワーカー同士で会話をするきっかけを作るためのサービスです。仕事分野、趣味などのプロフィール確認と簡易なメッセージ機能により、相談に乗ってほしい相手を見つけたり、関心の近い人を見つけたり、オフィスでの交流を促進します。
・快適性向上・混雑回避サービス
トイレ・休憩室・喫煙室など利用する前に、混雑状況を把握できます。ビル・街区を利用するワーカーは混雑を避けて快適に利用できます。
b.ワークインライフを意識したい人向けサービス
・ビル・街区内のお店の利用
ワークポータルからライフポータルへ1アクションで切り換えて、オフィス周りのお店のおすすめ情報のチェック、オフィスビルに入っているテナントの予約などができます。街区開発・運営者にとっては、店舗情報の紹介やお知らせを掲載したり、クーポン配信やイベント開催情報などの販促に活用できます。
・ハウスマネー(地域通貨)
街区のみで利用できる専用の通貨を提供します。電子マネー決済により街区内での消費を促進し、来街するきっかけにつなげます。
c.民間街区型スマートシティでのサステナビリティに資するサービス
昨今、企業が二酸化炭素の排出量の低減に取り組むのは当然のこととして認識されていますが、実は個人が関与する家庭と業務を合わせると全体の30%を超えます。したがって、排出量の低減には個人の意識と行動が重要なファクターとなっており、企業の取り組みにも一人ひとりの従業員の行動変容が大きな影響力を持つことになります。
NTTコムウェアは、NTTコミュニケーションズと連携して従業員の環境意識向上と行動変容に焦点を当てた「Green Program」を提供しています。2023年7月には、環境省が取り組むデコ活の一環として、従業員エコアクションチャレンジ「ONE TEAM CHALLENGE」を開催しました。13企業が参加し、従業員の約8割が環境意識の向上を実感する等、成果をあげています。

2)街区開発・運営者向けサービス群
民間街区型スマートシティを開発する事業者の方々(不動産デベロッパー、鉄道会社など)に向けたサービスとして、大きく分けて3つの領域で提案しています。
1.ビル情報の可視化
エリアにあるビルの設備・環境情報、混雑状況などのデータを直感的に情報として捉えることができる、サジェストデータボード(ダッシュボード)を備えます。リアルタイムでビル情報、センサー情報に基づいたアラート発出が可能です。
2.ビル環境のマネジメント
必要な情報を整理・可視化することで、人流・空調・照明のコントロールがより容易になります。ビル管理者の月次レポート作成や商業テナント活性化のためのレポート作成の支援から、データに基づく業務改善などに活かせます。
3.ビル周辺への拡張
オープンデータやエリアの環境、人流情報を街区全体で組み合わせて、データの予測・分析ができます。

先に紹介したGreen Programを連携させることで、テナント単位、ビル単位のサステナビリティアクションを数値データに基づいて、分析し可視化できます。

3)データプラットフォーム(都市OS)
ここまで紹介した、来街者向けサービス、街区開発・運営者向けサービスを実現するためのデータプラットフォームとして、「Connected X®(コネクティッドクロス)」をベースにした「Smart Data Platform for City」を提供します。
民間街区型スマートシティで求められる、データの収集/分析・予測、情報の可視化、データの利活用を実現するために必要な基本機能を実現し、適切な利用形態で提供できるプラットフォームです。

Connected Xは、日本初となるスマートシティの国際認証ISO37106を取得した名古屋市東区東桜一丁目エリアで進めていた街づくりプロジェクトにおいて、新たな働き方を支える最先端ICTのひとつとして、アーバンネット名古屋ネクスタビルに導入される等の実績があります。
GreenUsは来街者向けサービス、街区開発・運営者向けサービス、そしてサービスを実現するためのプラットフォームまでを一体として提供できることが強みです。NTTコムウェアは、これからもあらゆる企業との共創によりサービスを拡充し、サステナブルなスマートシティの実現に取り組んでいきます。
芝田 豊綱
NTTコムウェア
エンタープライズソリューション事業本部
ビジネスイノベーションソリューション部
第2ソリューション部門長
GreenUsソリューションプロデューサー

2024/03/11