

NTTコムウェアは、2025年2月19日から21日にかけて東京国際展示場で開催された「スマートエネルギーWEEK春/PV EXPO太陽光発電展」に出展。展示会には、次世代太陽電池から太陽光発電所の建設、保守・運用まであらゆる製品・サービス・技術が集まり、世界各国から専門家が来場した。カーボンニュートラル実現が社会全体で意識されるなかで、NTTグループのGXブランド「NTT G×Inno」のもと、再生可能エネルギー発電事業の効率化を支援する「Smart Data Fusion」を中心としたソリューション展開に期待が集まっている。
再生可能エネルギー発電の効率的な事業運営を支援する「Smart Data Fusion」
社会全体のカーボンニュートラル達成に向け、特に再生可能エネルギーは発電事業者だけでなく、小売業や製造業など、従来は発電と関係のなかった事業者にも取り入れられるようになっている。その中で、太陽光発電や風力発電は、天候や環境の影響で発電量が不安定になりやすいため、発電設備を導入するだけでなく、いかに効率的に事業運営を行うかが重要となる。
Smart Data Fusionは再生可能エネルギー発電事業において、複数の電源種別や発電所、事業体を横断的に管理し、多種多様なデータの分析・利活用を可能とする事業統合プラットフォームであり、データドリブンな意思決定をサポートすることで、収益最大化の実現に寄与する。
Smart Data Fusionには3つの特長がある。1つめは、大規模発電事業者の経営ノウハウをもとに設計されたダッシュボードである。発電事業における重要な経営指標を可視化し、リアルタイムの情報を表示することで、タイムリーな意思決定とアクションプランの策定を支援する。2つめは、AIを活用した高精度推定モデルである。このモデルを用いて推定した期待発電量と実績発電量の比較により、設備故障予兆検知や異常検知が可能となり、ダウンタイム削減や収益ロス回避につながる。また、発電量の計画値に対して電力不足や余剰といったインバランス(需要量と供給量の差)が発生すると、一般送配電事業者による電力量の補填や買い取りが行われるため、発電事業者はインバランスコストを負担しなければならない。Smart Data Fusionでは、高精度な発電量推定によるインバランスリスクの低減、すなわちインバランスコストの低減を実現する。3つめは、発電運用データと財務データの一元管理である。バラバラに管理されている複数電源種別の発電運用データと財務データを併せて管理することで、事業判断を迅速化し、投資対効果のモニタリングも可能となる。

経営管理と運営管理を効率化する「太陽光ダッシュボード」
Smart Data Fusion には、NTTアノードエナジーと協力して開発された太陽光ダッシュボードが搭載されており、「経営管理ダッシュボード」、「運営管理ダッシュボード」、「O&Mダッシュボード」の3種類がある。

経営管理ダッシュボードでは、所有サイト全体の発電状況や異常ステータスを把握することができるため、発電量の予実管理や異常サイトの特定が可能である。また、個々のサイトの発電状況の把握・分析が可能であるため、サイト毎に達成率や稼働率等を比較したり、財務状況を把握することもできる。発電事業の経営目線で最適化されたダッシュボードといえる。
また、運営管理ダッシュボードは、PCS(パワーコンディショナ)* の運転状況をリアルタイムで可視化し、異常要因の分析をサポートする。さらに、O&Mダッシュボードでは、発電異常に対する早期検知・メール通知に加え、受変電設備までの機器状況の把握、設備異常の早期検知・メール通知が可能である。
* PCS(パワーコンディショナ):太陽光発電で作った電力を家庭やビル、工場などで使えるようにするため、直流から交流へ変換する装置
AIモデルによる高精度な発電量推定がもたらす収益性向上
太陽光ダッシュボードには、「発電量推定モデル」と「将来発電量予測モデル」の2つのAIモデルが搭載されており、発電所毎にモニタリングAIを配置することで統合管理を実現している。
発電量推定モデルは、設備の不調を早期に発見しダウンタイムを低減することで、収益性向上を実現する。個々の発電所の特性を理解し、継続的に自己学習して最適化するように実装されている。日射計を設置していることが多い高圧サイトであれば、日射計から得られる実績日射量をもとに期待される発電量を高精度*に推定することができる。一方、日射計を設置していないことが多い低圧サイトでも、パネル角度や気象データなどを用いて日射量を推定するAI(日射量推定モデル)が備わっているため、少ない誤差*で発電量の推定が可能である。推定発電量と実績発電量の差異をもとに設備異常を早期に検知することができる。
* 発電量推定精度(誤差範囲)は、高圧サイト(日射計あり):2%未満、低圧サイト(日射計なし):10%未満である(諸条件によって変動する可能性あり)

将来発電量予測モデルは、JEPX(日本卸電力取引所)の時間前市場までを見据え、翌々日から直前までの精緻化された計画発電量を算出するAIモデルである。卸電力市場への売買計画や蓄電池の運用計画に活用することで、収益性の向上が期待できる。また、非FITサイトにおける発電量計画の提出業務の効率化やインバランスコストの低減も期待できる。運転開始から最短1か月で計画発電量算出が可能であるという。
これらのAIモデルを搭載した太陽光ダッシュボードは、NTTアノードエナジーに導入されており、さらに大規模発電事業社1社がトライアル導入している。
発電事業DXをめざした新たな2つの取り組み
展示ブースでは、発電事業DXをめざした検討中の取り組みが2つ紹介された。1つは「芝刈り機等を使用したパネル裏点検」である。雑草の伸びや太陽光パネル汚れの堆積具合把握、災害時の1次確認における利用が想定されている。また、太陽光発電設備の盗難対策のため、監視カメラとAIを組み合わせた侵入者検知の実現も検討されているとのことだ。中・大規模サイト向けの展開が検討されている。
もう1つの取り組みは、NTTアノードエナジーと共同実証中である「AIモデルを活用した劣化診断」だ。NTTアノードエナジー管理発電所の発電データから、発電状況の簡易的比較を行う評価ツールと機能を開発しているという。この機能には、NTTコムウェアが開発した発電量予測技術が活用されている。多数ある発電所の発電機能をAIが単一指標で評価付けし、時系列グラフでサイト間比較を行うことで、発電が安定しているサイト/設備異常が疑われるサイトを視覚的に判断できる。また、サイト内のPCS間比較も可能であるため、特異な推移をしているPCSを見つけ異常を疑うこともできる。

風力発電領域への展開 ~「無停止ブレード点検技術」と「鳥検知・飛行軌跡判別技術」~
Smart Data Fusionは複数の電源種別を横断的に管理する事業統合プラットフォームとして、風力発電領域にもソリューションを展開している。本展示では、画像AI技術を活用した2つの取り組みが紹介された。

1つは「無停止ブレード点検技術」を活用した取り組みである。回転中のブレードをハンディカムなどで撮影することで、AIがブレードの静止画を抜き取り、劣化状況の自動判定を行う。ブレード無停止状態での点検が実現できるため、ダウンタイム削減が期待できる。
もう1つは「鳥検知・飛行軌跡判別技術」を活用した取り組みである。発電所近隣に設置されたカメラにより鳥を検知し、出現個体数や鳥種の判別が可能である。風力発電施設の建設前に環境アセスメントを考慮して立地選定を行う際に活用できる。また建設後は、鳥類接近を検知した際に風車を停止したり、忌避音を発砲することで、衝突防止が期待できる。
風力発電領域においては「風力ダッシュボード」が用意されており、運転状況の可視化、発電量と売上の予実管理等が可能である。また、前述の2つの取り組みは風力ダッシュボードと連携しているため、可視化された情報を参照することが可能である。
「Smart Data Fusion」×「エネパイロット」連携による自家発電設備の効果的な再エネ活用
商業施設、オフィスビル、工場などの複数拠点に自家発電設備を所有し、自家消費を行う企業にとって、再生可能エネルギーをいかに効率的に活用するかが課題である。本展示では、Smart Data FusionとNTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)の「エネパイロット」を連携することで、自家発電設備全体のエネルギーを最適化するソリューションが紹介された。

エネパイロットは再生可能エネルギーの統合管理サービスである。発電予測、需要予測に基づくエネルギー計画や蓄電池制御を統合的に管理し、設備のさらなる普及や利用率向上の実現を図っている。
Smart Data Fusionがエネパイロットと連携することで、蓄電池を含めた発電設備の統合管理、発電/需要状況の可視化が可能となり、再生可能エネルギーのさらなる効率化が期待できる。エネパイロットによる各拠点の蓄電池制御を通じて、余剰電力の有効活用、災害に備えたBCP電力確保も可能である。
本展示では、NTTコムウェアのSmart Data Fusionを中心とし、NTTグループ各社が連携して再生可能エネルギー発電事業の課題解決へ取り組んでいることが示された。カーボンニュートラル実現に向け、NTTコムウェア、そしてNTTグループ各社のソリューション展開に期待が寄せられている。
本件は、NTTグループが展開するGXソリューションブランド「NTT G×Inno(エヌティティ ジーノ)」※の取り組みの1つです。

URL:https://group.ntt/jp/group/nttgxinno/
2025/04/04
- ※ 商品およびサービスの内容は、予告なく変更する場合がありますので、あらかじめご了承ください。
- ※「Smart Data Fusion」は、NTTコムウェア株式会社の登録商標です。
- ※「エネパイロット」は、NTTアドバンステクノロジ株式会社の登録商標です。
- ※「NTT G×Inno」は、日本電信電話株式会社の登録商標です。
「NTT GX(Green Transformation)× Innovation」の略称であり、社会へのソリューション提供を通じてGX分野でInnovation(変革)をおこし、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献していく取り組みです。 - ※ その他、記載されている社名、商品名などは、各社の商標または登録商標である場合があります。