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ITジャーナリストや現役書店員、編集者が選ぶ デジタル人材のためのブックレビュー 
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今月の書籍

レビュワー:新野 淳一

  • 『オープンソースの教科書』
  • 『ソフトウェアアーキテクチャの基礎 ―― エンジニアリングに基づく体系的アプローチ』

現在のシステムに必須のオープンソースとのつきあい方を指南

 オープンシステムうまく取り入れて使いこなすことが、現在のITシステムにおける開発、運用、導入など多くの場面で重要なことは、本欄の読者であれば十分にご存じだろう。

 しかし多くのオープンソースは、商用製品のようなベンダからのドキュメントやサポートなどの提供はない。利用者が自分で情報を探し、場合によってはコミュニティなどに参加し、使いこなしていくことになる。

 それゆえに、オープンソースとの付き合い方にはさまざまなパターンがあり、そのパターンによって歴史的経緯やコミュニティの成り立ちと参加方法、ライセンスへの理解、貢献の手段など幅広い理解が求められる。

 本書はこうしたオープンソースとの上手な付き合い方についての入門書だ。オープンソースとは何かについて技術者向けの平易な説明が第1章「オープンソースとは」で示され、Android、Linux、OpenOffice、Gimpなど多様なオープンソースの例が「第2章 オープンソースを使ってみる」で紹介される。

 そしてオープンソースを支えるコミュニティとはどういうものか、その参加方法、心構えなどが丁寧に紹介される第4章、オープンソースのビジネスモデルに第5章で触れ、第6章でオープンソースの歴史、第7章ではオープンソースのライセンスについて企業が知っておかなければならない基本的な対応などを紹介している。

 どの内容もオープンソースに関わる上でITエンジニアが最低限知っておいて欲しい事柄について広く浅く、分かりやすく紹介することにフォーカスしていつつ、基本的な内容は十分に網羅されている。それでいてコンパクトにまとめられているため、読むのにもそれほど時間はかからないだろう。

 著者は長年にわたってオープンソースに関わってきた人たちであり、安心感がある。これから仕事でオープンソースに関わる人たちにおすすめしたい。

『オープンソースの教科書』

著者:宮原 徹、姉崎 章博

監修:OSPN

出版社:C&R研究所

https://www.c-r.com/book/detail/1416

重要性を増すアーキテクチャを網羅的に理解するために必読の一冊

 建築物の基本的な構造に、用途や規模に応じて「木造平屋」「鉄筋コンクリート」など複数の選択肢があるように、ソフトウェアにも用途や規模などに応じた構造、いわゆるアーキテクチャの選択肢が存在する。

 本書はそのソフトウェアにおけるアーキテクチャの最新の知識やノウハウをまとめた一冊だ。

 アーキテクチャを決定する過程では技術的な優劣や適不適の評価に加え、それを実装する組織との整合性などについても考慮しなければならない。つまりアーキテクトはアーキテクチャやプログラミングに関わる技術的なスキルのみならず、ビジネスに関する理解リーダーシップ組織内外での調整や交渉なども求められる。

 それら全体をカバーしようという意欲にあふれた本書は、まさに現在のアーキテクチャ解説本としてふさわしい内容を網羅している。

 前半ではアーキテクトの役割と、その思考、アーキテクチャの定義やその基本、そしてパイプラインアーキテクチャ、マイクロカーネルアーキテクチャ、サービスベースアーキテクチャ、イベント駆動アーキテクチャなど、8種類の主要なアーキテクチャスタイルの紹介が、歴史、特徴、事例、ケーススタディなど多面的に展開される。

 後半ではアーキテクチャの決定過程で求められる決定手法リスク分析図解チーム構成交渉リーダーシップなどが網羅されている。

 各アーキテクチャの説明はそれぞれ詳しく、後半のリスク分析や図解などはなかなか他では読めない。

 本書は出版前から多くのIT技術者の注目を集めてきた。というのも、クラウド登場以降、新たなアーキテクチャが登場し、アーキテクチャそのものの重要性が増してきていること、そしてその最新の知識やノウハウを集めた書籍が、多くのIT技術者が信頼を置くオライリーから出版されるからだ。

 本書の網羅性と詳細な説明は、その期待に応えたものになっていると感じる。アーキテクチャの実務に関わる人、興味のある人にとって、知りたいところを読むだけでも興味深い発見があるのではないだろうか。

『ソフトウェアアーキテクチャの基礎
―― エンジニアリングに基づく体系的アプローチ』

著者:マーク・リチャーズ、ニール・フォード

翻訳:島田 浩二

出版社:オライリー・ジャパン

https://www.oreilly.co.jp/books/9784873119823/

今月のレビュワー

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新野 淳一(にいの・じゅんいち)

ITジャーナリスト/Publickeyブロガー。一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA)総合アドバイザー。日本デジタルライターズ協会代表理事。大学でUNIXを学び、株式会社アスキーに入社。データベースのテクニカルサポート、月刊アスキーNT編集部副編集長などを経て1998年フリーランスライターに。2000年、株式会社アットマーク・アイティ設立に参画。2009年にブログメディアPublickeyを開始。2011年「アルファブロガーアワード2010」受賞。

2022/05/20

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